新技術紹介

張工

製作:(株)興和

1.張工の目的

のり面の風化,侵食および軽微な剥離,崩壊などを防止することを目的とする。

2.張工の種類

張工には,石張工,コンクリ-トブロック張工,コンクリ-ト版張工,コンクリ-ト張工がある。

3.張工の設計

(1)石張工,コンクリ-トブロック張工,コンクリ-ト版張工

  • ①石張工,コンクリ-トブロック張工,コンクリ-ト版張工は,粘着力のない土砂,泥岩などの軟岩並びに崩れやすい粘性土などののり面に用いる。1),2)
  • ②適用するのり面の勾配は,1:1.0より緩い場合であり,原則としてのり高は5m以内,のり長は7m以内とする。1),2)
  • ③石張工は,石材の緊結が難しいので,極力緩勾配で用い,あまり高くしない。2)
  • ④石張工に用いる石材は,割石あるいは雑割石とし,控えは30~40cmを標準とする。また,石張工は原則として練張とする。2)

石張,コンクリ-トブロック張,コンクリ-ト版張ののり面勾配と控長の例を表-1および図-1に示す。

表-1 のり面勾配と控長 図-1 コンクリートブロック張工の例

石張工,コンクリ-トブロック張工,コンクリ-ト版張工などの施工上の留意点を以下に示す。

  • 1)コンクリ-トブロック張工において,控えの小さいブロックを使用する場合は,胴込めコンクリ-トにより補強する。2)
  • 2)コンクリ-ト版張工は,布設時,裏込め材などを平坦に仕上げ,隣接の版,枠などを破損させないように注意する。2)
  • 3)隣接版,枠などに空間が生じないよう,間詰めコンクリ-トなどを施工する。2)
  • 4)大きなコンクリ-ト版を使用する場合は,温度変化を考慮して目地材を隣接部に設ける。なお,胴込めコンクリ-トとは,ブロック表面から控え長の間に入れるコンクリ-トを言う。2)
  • 5)裏込めコンクリ-トの厚さは,5~10cmを標準とする。現地の状況に応じて下敷材が必要な場合には,下敷材料として切り込み砕石を使用し,厚さは10~24cm(一般に20cm程度1))とする。2)
  • 6)湧水や浸透水のある場合には,裏面の排水を良好にするため栗石または切込砂利で裏込めをし,水とともに土の細粒分が流出する恐れがあるときにはフィルタ-を設ける。1),2)
  • 7)水抜き孔は,外径50mm(VP50)以上のものを用い,2~4m2に1箇所程度設ける。湧水が見られる場合,透水性の地山などにおいては,必要に応じて張工下部に増やす。1),2)
  • 8)のり面の縦方向に10m間隔で原則として隔壁工あるいは伸縮目地を設ける。2)
  • 9)のり長が長い(5m以上)場合には,水平方向にも隔壁工を設けることが望ましい。2)

写真-1 ブロック張工の施工例 写真-2 石張工の施工例

(2)コンクリ-ト張工

  • ①コンクリ-ト張工は,岩盤の風化を防ぐとともに,のり面表層部の崩落防止,土砂の抜け落ちの恐れのある箇所の土留め,岩盤の剥落を防止する機能がある。1),2)
  • ②のり面の勾配は,1:0.3~1:1.0を標準とし,直高は20m程度を限度とする。ただし,多段に設置する場合には,1段ののり高は15m程度を限度とする。2)
  • ③張コンクリ-トの厚さは,地山の状態,のり高,のり勾配および凍結の有無などを考慮して決定すべきであるが,一般的に20~80cmである。1),2)
  • ④断面内における勾配変化は,避けなければならない。やむを得ず大きな勾配変化となるときは,小段を挟んで変化させる。2)
  • ⑤ 一般に,1:1.0程度の勾配ののり面には,無筋コンクリ-トが用いられ,1:0.5程度ののり面には鉄筋コンクリ-ト張工やH型鋼などで補強したコンクリ-ト張工が用いられる。1),2)
  • ⑥抑止力を期待し,ロックボルトやグラウンドアンカ-工を併用する場合は,張工に応力が作用するため,構造計算を行って,厚さ,鉄筋の配筋などを決定する必要がある。2)
 

コンクリ-ト張工の例を図-2に示す。

図-2 コンクリート張工の例

コンクリ-ト張工における施工上の留意点を以下に示す。

  • 1)地山との一体化を図るためのすべり止め鉄筋は,1~2m1),2)に1本,打ち込み深さはコンクリ-ト厚の1.5~2.0倍1)とする。1),2)
  • 2)水抜き孔は,原則として2~4m2に外径50~100mm以上のものを1箇所程度設ける。湧水のみられる場所や透水性の地山などの場合は,必要に応じて増やす。2)
  • 3)横方向の水路は,天端,小段および下部に設け,縦方向の水路は現地の状況に応じて適当な間隔で設ける。縦水路は,水路深さを浅くし,幅を広げるようにして勾配の変化などで飛び散ったり,溢れたりしない構造とする。2)
  • 4)上方にのり面が続く場合は,落石防護柵を,上方が平坦な場合は侵入防止柵を設けることが望ましい。また,落石防護柵を設ける場合には,防護柵と張りコンクリ-トが一体となるように配筋して補強する。2)
  • 5)施工目地は,10~20mに1箇所設ける。2)
  • 6)コンクリ-トの打継ぎを行う場合は,のり面に垂直あるいはカギ型にする(図-3)。また,打継ぎ部には、打継ぎ鉄筋を設置することが望ましい。1),2)
  • 7)コンクリ-ト張工は,コンクリ-ト厚が薄いので,締固め作業,コンクリ-トの養生(特に暑中およぶ寒中の養生)には十分に注意する。1),2)
  • 8)ロックボルトやグラウンドアンカ-工を併用する場合は,鉄筋や鋼材の配置に十分に注意し,打設空間を塩ビ管やボイド管などによって確保しておく必要がある。2)
  • 9)コンクリ-ト張工は,ある一定区間(20~50m)を着手したならば,その区間が完成してから次の区間に着手する。2)

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参考文献

  • 1)(社)日本道路協会:道路土工-のり面工・斜面安定工指針,平成21年6月,p303-307
  • 2)(社)全国治水砂防協会:新・斜面崩壊防止工事の設計と実例,平成19年3月,p175-180
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