切土・盛土
制作:サンコーコンサルタント(株)

●切土・盛土
 地すべりが活動する理由には様々なものがありますが、断面図をみただけでも感覚的にわかりやすいものとして、上部の土塊が多く荷重が重い、あるいは末端部に押さえる土塊が少ない、といったことがあります。これを解消するための対策工が、頭部排土工や押さえ盛土工で、地すべりの滑動力を低減させたり、すべり面のせん断強さを増加させたりする工法です。

●頭部排土工
工法の特徴
 排土工には、地すべり土塊のすべてを排除する場合と一部を排除する場合がありますが、普通は頭部の土塊の一部を排除します。
地すべりの規模や分布、土の性状を地盤調査によってできるだけ正確に把握したうえで安定計算を行い、目標とする安全率になるように計画します。
 地すべりの末端部を切土する場合は、先行して頭部排土工を行ったり、抑止工によって安全率を高めておく必要があります。
排土工は、最も確実で効果の期待できる工法の一つで、一般には地下水排除工などと組合せて用いられることが多い工法です。

設計・施工上の注意
・ 背後の斜面に波及するすべりの可能性はないか、背後斜面の潜在的な地すべりを活動させないか、また、新たな地すべりを発生させないかに注意する必要があります。
・ 斜面の安定を損なわないよう、上部から下部に向かって切土することが原則です。
・ 施工時期は乾季を選び、降雨時の作業は避けるべきです。
・ 亀裂の多い岩盤やスレーキング率の高い地層などの切土勾配の設定には注意する必要があります。
・ 排土後の法面処理を十分に行う必要があります。

押さえ盛土工
工法の特徴
 押え盛土工は、地すべり土塊の末端部に盛土を行うことにより、地すべり滑動力に抵抗する力を増加させるものです。
 盛土するために必要な用地幅を抑えたり、盛土自体の安定を確保するために擁壁工が多く用いられます。
 地すべり地では湧水が多いため、井桁組擁壁が多く用いられてきましたが、最近は変形を許容できるジオテキスタイルやフトン籠工なども利用されています。

設計・施工上の注意
・ 盛土部の下方に潜在的な地すべりがある場合は、地すべりを誘発する可能性があります。
・ 地すべり末端部の土は乱されていることが多いため、盛土する場合は基礎地盤が安定するかの検討が必要です。
・ 地下水流を妨げることにより、地すべり土塊内の間隙水圧を上昇させ、地すべりを誘発させる場合があります。この時は、地表水や地下水の排除を行う必要があります。
・ 盛土自体の安定を確保する必要があります。
・ 擁壁工の床掘などで末端部を切土する場合は、その時の安定を確保する必要があります。
・ 道路計画などで地すべりの頭部に盛土する場合は、地すべりを助長させることになりますので、抑止工を主体としたより大きな対策工が必要になることが考えられます。このような場合には、軽量盛土工法で荷重をできるだけ軽減させたり、構造物によって地すべり土塊に荷重を伝達させないなどの対処も考えられます。