原位置試験
制作:利根コンサルタント(株)

標準貫入試験

@ 試験の概要
 標準貫入試験(standard penetration test)は標準的な地盤指標(N値)を求め、試料を採取することを主な目的として、地盤調査における原位置試験方法の中でも最も基本的かつ標準的な調査方法として、広く利用されている。
  N値とは、質量63.5±0.5kgのドライブハンマーを76±1cm自由落下させて、標準貫入試験用サンプラー(以下サンプラーと記す)を地盤に30cm打ち込むのに要する打撃回数である。
A 試験技術の説明
 ドライブハンマーの自由落下で原則予備打ち15cm貫入後、30cmの本打ちを行う。予備打ちはドライブハンマーの落下高を小さくして軽打撃によって貫入抵抗を確認しながら貫入する。ただし、N値が50以上と想定される場合は予備打ちを省略できる。本打ちはドライブハンマーを76±1cm自由落下させ、30cm貫入したときの打撃回数をN値として記録する。地盤が硬くて30cm貫入が不可能な場合は、打撃回数の上限を50回とし、その時の貫入量を併記する(例:50回打撃時の貫入量15cm→N=50/15)。
B 試験上の留意点
 本試験は人力で操作することが主体である手動落下法(コーンプーリー法、トンビ法)での実施が多い。現在、標準貫入試験装置は自動化装置(落下装置・記録装置)が開発され、普及段階に達している。これは、ドライブハンマーを所定の落下高さまで自動(または手動)で吊り上げた後、自動的にドライブハンマーが落下し、打撃ごとの貫入量を測定しデータを収録する装置である。これにより、上記測定誤差の解消ができるので積極的な導入が望ましい。
C 利用方法及び留意点
 標準貫入試験が普及している理由のひとつに、N値と地盤の性状との関係について豊富なデータの蓄積がある。蓄積されたデータを基に、N値と相対密度等の物理的性質や内部摩擦角等のせん断定数との関係などが提案されている(ただし、N値はあくまでも土の硬軟、締まり具合の相対値を知る値であり、これら地盤定数との相関性は必ずしも高くないことを留意する必要がある)。

孔内水平載荷試験

@ 試験の概要
 孔内水平載荷試験は、ボーリング孔の孔壁面を加圧したときの孔壁面の変形量(孔壁の拡がり)を測定することによって、地盤の物性(地盤の強さ・変形特性)を調べる試験である。
A 試験技術の説明
 試験装置の基本的な構成は、下図の@ボーリング孔内に挿入し孔壁を加圧するプローブ、Aプローブに加える圧力または変形量を制御、測定する部分、B両者を連結し圧力を伝達する部分、の3つのユニットからなる。また、プローブの形式により@流圧体によりゴムチューブを膨張させて孔壁を加圧する等分布荷重方式、A反円形の剛板により孔壁を加圧する等変位方式、がある。孔壁の変形量を測定する方法は、測定管に注入される液体の量により間接的に測定する方法が一般的であるが、プローブに内蔵した変位計により直接変位を測定する機種もある。
B 試験上の留意点
 本試験はボーリング孔壁を対象とする載荷試験であり、孔壁面の乱れの状態は試験結果の良否に大きな影響を与えるので、削孔後直ちに試験を行う、掘削水の圧力・水量を多くしない、掘削後のスライム処理は短時間で行う、コアチューブ・プローブの挿入引き上げはゆっくり行う、孔内水の変動を少なくする、などに留意する必要がある。
C 利用方法及び留意点
 試験結果は主に杭やケーソン基礎の水平抵抗に関して利用されることが多い。地すべりの現場では抑止杭の設計に利用されることがあるほか、他の多くの試験から得られた物性値との相関関係から、各種の地盤定数を推定することがある。

単位重量試験(現場密度試験)


 単位重量試験(現場密度試験)とは、現場で土の単位重量(または湿潤密度)を求める試験である。試験方法は、現場の土を直接測定して求める方法と、他の物理量で密度を間接的に測定する方法などがある。このうち、一般にはコアカッター法が他の方法と比較して迅速性に優れ測定用具が安価であることから多く使用されている。
 コアカッター法はコアカッターと呼ばれる鋼製の円筒を地盤に貫入し、土をコアカッターに満たした状態で質量を測定し、土の質量と容量の比から湿潤密度を測定する方法である。これに類似したものとして、標準貫入試験サンプラー内に円筒を入れ、標準貫入試験にて採取したサンプルから湿潤密度を測定するものもある。

採取法


 試料を採取する際には、適用地盤とサンプリング位置、サンプリング後の搬送方法や試験内容などを勘案する必要がある。
 土質試料を不撹乱状態で採取(サンプリング)する方法を大別すると、以下にまとめられる。
@ノンコアボーリングによってボーリング孔を削孔し、その孔底を利用してサンプリングする。
Aロータリー式機械ボーリングによってボーリングし、同時にサンプリングする。
B粘性土などで埋め立てられた超軟弱地盤に直接サンプラーを押し込んでサンプリングする。
C露頭やピットからブロックを切り出す。
D地盤を凍結して土の柱を引き抜いたり、凍結地盤をコアリング(サンプリング)して円柱状の試料を採取する。
@〜Bは、チューブ状のサンプラーを利用する方法であり、一般的に広く用いられる方法である。そのサンプラーも適用地盤によって単管式・二重管式など様々な種類がある。下表に地盤工学会によって基準化されたサンプラーの構造と適用地盤の関係を示す。現在では技術開発が進み、今までに採取困難とされていた礫質土の不撹乱状態でのサンプリングも可能なサンプリング方法も確立されつつある。
 不撹乱試料はサンプリング時の撹乱のほか、搬送時の撹乱や含水比変化が起きないように留意する。 また、上記以外にも試験内容によっては撹乱状態でサンプリングすることもある。この場合、採取方法は人力又は機械により採取した試料を袋に詰めて試験室に搬送することが多いが、試料の含水比が変化しないように十分注意する必要がある。