試錐日報解析
制作:国土防災技術(株)

(1)目 的
ボーリング掘削中における孔内水位の変化状況から,日々の(または1回の)掘削区間ごとの湧水,漏水の有無やその量を把握し,地層の透水状況を推定し,水文地質判定の補助資料として利用する。

(2)測 定 仕 様
ボーリング掘削期間中において,次の事項についての作業および観測,観察を行い記録する。
a. 前夜および当日の天候(晴雨の別)の記録
b. 念入りな孔口止め(地表水の孔内流入防止)
c. ケーシングによる漏水区間の封じ
d. 当日作業前(ロッド挿入前)と作業後(すべての作業終了後)の孔内水位観測
e. 送水掘り,無水掘りの別,および湧水,漏水状況の記録

(3)試錐日報解析図の作成方法
試錐日報解析図の作成は,横軸に作業日(昼,夜間の天気も併せて記入 (a),縦軸に当日の掘進深度,作業前後の水位,ケーシング挿入状況,湧,漏水状況等を記入する(b)。

(4)解析判定基準
解析判定は1日の掘削区間ごとに行うことを標準とし,次表に示す基準に基づいて判定する。 最終的な水文地質判定は,ボーリングコア判定,地下水検層などの結果と総合して行う。
注−1) 作業前後の水位は,ケーシングによって,この面より上位の地下水や漏水等は遮断されていることが条件である。
注−2) 表中,孔内水位の低下・上昇の程度については次式で定義する湧漏水率と水位変動幅を目安として判断する。


(5)解 析 例
水位変化状況から各地層は次のように判定される。

区間(1)  GL−0.00 〜 3.50 m間 砂質粘土層の掘削を無水で行っている。作業後の水位は孔底わずかであったが,翌日の作業前水位が,GL−1.50 mまで上昇。このため砂質粘土層内には地下水流入があるものと想定され,判定は「有圧水」となるものの,表層部で自由地下水帯であることから「帯水層」と修正判定する。

区間(2)  GL−3.50 〜 8.00 m間
この間の削孔前後の水位変化は無く,「難透水層」と判定。

区間(3)  GL−8.00 〜 10.00 m間 削孔中 GL−8.00 mから70%程度の漏水が確認された。翌日作業前の水位も低下しており,漏水に富む「部分漏水層」と判定される。

区間(4)  GL−10.00 〜 14.50 m間 6/9 作業後水位と 6/10 作業前の水位を比較すれば,水位低下がわずかであり「難透水層」と判定される。この区間は削孔中に漏水(100%)が確認されるGL−14.50 mまでと想定。

区間(5)  GL−14.50 〜 17.00 m間 6/10 削孔中にGL−14.50 m 〜 16.00 m にかけて,漏水があったことから「透水層」と判定される。強風化岩深層部での漏水区間であり,不圧の裂カ水帯である可能性もあることから「?」マーク付きの「不圧地下水帯(不圧帯水層)」と判定。 GL−16.00 m 〜 17.00 mにかけては削孔中漏水がなかったことから「難透水層」と判定。

区間(6)  GL−17.00 〜 18.00 m間 削孔中 50%の漏水が確認された。翌日作業前の水位が 3 m程度上昇していることから,この区間からの地下水流入があったもので,「有圧地下水層」と判定。有圧水の圧力水頭高さは,作業前水位と想定される。

区間(7)  GL−18.00 〜 20.00 m間 作業前後の水位変化が少ないことから「難透水層」と判定される。

判定結果から各地層は
と判定される。強風化層内および底部で有圧 〜 不圧地下水帯等が想定され,強風化層の水文条件が単一でないことが判明する。
これらの判定結果と地下水検層や,水位観測等を対比して,水文地質判定を行い,地すべり機構の解析に利用する。