林野庁 所管       水上(みなかみ)地すべり
兵庫県

全景写真(三菱マテリアル資源開発(株)提供)

位置図
掲載号:Vol.26,No.3(2000年3月,通巻78号)
地すべりの概要

1.地すべりの概要
    
平成7年3月に発生した極めて活発な比較的大規模な新第三系の頁岩・凝灰岩地域の岩盤地すべりである(指定面積21.61ha、滑動面積約6ha)(「地すべり地平面図」参照)。
     地すべりの規模は、斜面長300m、幅250m、最大すべり面深度40m、斜面の平均勾配30°、推定移動土塊量約150万m3
     地すべりの形態は末端部が直接河川の上位斜面に現れる末端開放型地すべりであり、断面形状は椅子型を示す。

2.
地形・地質概要
     新第三紀中新世村岡塁層の湯舟川黒色頁岩層(頁岩・凝灰岩・凝灰質砂岩互層)、白菅山頂部を中心にする貫入岩(安山岩類)及び段丘堆積物からなる。
     頁岩は割れ目が多く、板状の節理が発達し風化に弱く極めて脆い。また表層部や尾根部に見られるものは風化が進み、一部は礫混り粘土状を呈する。
     凝灰岩は、灰白色の粗粒〜細粒のやや多孔質の割れ目の少ない堅硬な岩である。
     安山岩はやや青緑がかった堅硬緻密な岩石で、中硬岩〜硬岩に分類される。
     段丘堆積物は昆陽川流域や長岩川右岸に分布し、堆積物中には5cm〜10cm(最大100cm)の頁岩・凝灰岩等の亜円礫〜亜角礫が含まれ玄武岩質岩類を含む場合がある。
     地すべり地の基盤をなす湯舟川黒色頁岩層の一般的走向・傾斜は、N40〜50°E・30〜35°NWであり、すべりの移動方向は流れ盤である。

3.地すべり状況
     地すべりブロックは、AE5つのブロックからなる(「地すべりブロック模式平面図」参照)。
     各ブロックは互いに関連しているものの地表では移動方向、移動時期等にそれぞれ独自の様相を示している。

4.素因・誘因
     素因
(1)地すべりは尾根の山頂部〜山麓部にあり、末端開放型で、すべり面縦断形状は椅子型を示す。
(2)角閃石安山岩の貫入や断層から、地すべり地の冠頂部から中腹にかけて基盤の脆弱化帯が存在していると考えられる。
(3)斜面中腹部の安山岩の貫入による地下水の流動を規制。
(4)層理面に平行に粘土化帯の存在と節理等の地質的脆弱体の存在。
     誘因
(1)平成7年117546分発生のM7.2の兵庫県南部地震による震度4程度の揺れ。
(2)平成711日から17日までの降雨285mm(内融雪量約100mm)によるせん断抵抗の低下。
(3)地震発生後の降雨(1月515mm2195mm3205mm)と例年にない積雪と融雪による間隙水圧の上昇。

5.対策工(「対策工平面図」、「縦断面図」参照)
     移動土塊頭部の荷重低減のための頭部排土工86,000m3
     ブロック内への地下水の浸透・流入する地下水排除のための集水井10基、集水ボーリング工延長8,470m
     末端部押え盛土工8,000m3
     抑止工 杭打ち工182本(平成10年度実績)。
     「対策工事と変動量、安全率の推移表」 参照。
地すべりの特徴
 地すべり地位置図
 地すべりブロック模式平面図
 対策工平面図
 縦断面図(主側線)
 対策工事と移動量、安全率の推移表