構造改善局所管      宿西(やどにし)地すべり   兵庫県




「地すべり技術」掲載号:Vol.32,No.3(2006年3月,通巻96号)
地すべりの概要

1.地すべりの概要
 宿西地区は、兵庫県の北部、美方郡香美町村岡地区の南部に位置する。本地区は慢性的に小規模地すべりが発生し、農地・農業用施設に被害を及ぼしていたことから、平成4年8月に防止区域の指定を受けた。本地区における対策工は、地下水排除工を主体として実施され、平成13年に概成となった。

2.地形・地質概要
 本地区の西側には標高900m程で北北東−南南西に伸びる稜線が分布し、東側には湯舟川が南北に流れている。稜線から河川までは5〜15°の勾配で、全体として大規模な地すべり地形を呈している。
  本地区の基盤地質は、新第三紀中新世北但層群のうち村岡層群にあたり、主に黒色泥岩からなる。また、基盤岩の上位には泥岩起源および安山岩起源の崖錐堆積物が分布する。安山岩起源のものは、鉢伏火山岩と呼ばれる第四紀の噴出物であり、この周辺の尾根部にキャップロック状に分布している。

3.地すべり機構
 北但層群の泥岩は、有史以前の過去に大規模崩壊を起こした時の旧崩土と推定される。泥岩の層理面は0〜2°の勾配で、流れ盤となる。地すべり崩土は高透水性で、強風化部より上位に流動層がある。また、新鮮な岩であっても流動層があり、基盤と崩土の境界にやや難透水性の区間がある。
  素因としては、風化しやすい泥岩の分布、泥岩と土砂(風化岩)の緩やかな勾配を持つ境界面、ブロック頭部の先にある山体の透水性の高い安山岩の分布(地下水の供給源)が挙げられる。

4.対策工
 本地区の地すべりの特徴は、
@ 大雨や融雪時に明瞭な変動が認められない。
A 地すべり崩土の地下水流動が大きい。
B ブロックは農地で占められている。
よって、工法としては地下水排除工主体となっている。
地すべりの特徴
 宿西地区事業経緯
 対策工平面図
 模式断面図
 地すべりブロック一覧