林野庁所管 鍛冶屋地すべり 石川県

「地すべり技術」掲載号:Vol.41,No.3(2014年、通巻122号)

「地すべり技術」掲載号:Vol.41,No.3(2014年、通巻122号)

1.地すべりの概要

鍛冶屋地すべりは、輪島市街地の南西約21kmに位置し、門前町南西部を流下する二級河川南川左岸の鍛冶屋地区に分布する。
往時より融雪期・豪雨期には地すべり性崩壊やそれに伴う土砂流出が多数あったとされる。その中でも顕著なものは約140年前の江戸時代末期の大惨事に遡る。戦後は、昭和34年融雪期の集中豪雨により地すべりが発生し、これに対して同年5月の地すべり防止区域指定後、昭和45年頃まで防止工事が行われた。鍛冶屋地区の主な地すべりは以下に示される。

<江戸時代末期の災害>
斜面末端の南川河岸付近にあった集落が地すべり性大崩壊の発生を受け、民家十数戸の倒壊及び死者10名という大惨事となった。集落はその後、現在地に移築したと言われている。
<昭和34 年の災害>
現在の集落周辺において融雪後の集中豪雨により地すべりが発生した(Eブロック)。このブロックでは昭和45年頃まで対策工を実施し、その後の活動はなく、安定化している。
<平成11年の災害>
平成11年6月末、南川支流の谷川上流域の山腹が崩壊した(Aブロック)。また崩壊土砂が斜面末端部の谷底に堆積し、谷底付近の水路と農道を埋没させた。さらに崩壊土砂の一部は流動化し、水路沿いに40m 程度流出した。

2.地形・地質

鍛治屋地区周辺の南川左岸側斜面は山頂標高300m 程度の丘陵性山地で南川及びその支流によって刻まれた谷は南東-北西方向これに直交する南西-北東方向のものが発達しており起伏に富んだ地形を呈する。その山腹斜面は平均斜面傾斜30度以上の斜面が多い。その中でも鍛治屋地区中田地区小山地区椎木地区等集落が位置する谷は開析が進んだ比較的緩やかな斜面傾斜となりこれらの多くは地すべり地形を呈している。

鍛冶屋地区周辺には新第三紀中新世の堆積岩類が分布する。それらは道下礫岩層や縄又層とよばれるものである。
道下礫岩層は砂岩・泥岩等を挟む礫岩主体の地質であるが非海成の堆積物であり一般に乱雑な堆積構造となっていることが多い。礫岩の含有礫は礫径が数cm~50cm程の円礫状の安山岩類が主体で流紋岩類や花崗岩類のものを少量を含む。礫岩の基質は凝灰質で固結度が低く土砂化しやすい特性を持つ。
これらの新第三紀層の上面には新第三紀層起源の地すべり崩積土あるいは崖錐堆積物が被覆分布しておりその層厚は最大20m程度である。これらの土質は主に粘土質礫状のものである。

3.素因・誘因

(1)素因

  • ・凝灰質分に因る膨潤性粘土鉱物を含む基盤岩
  • ・流れ盤構造をもつ風化岩の分布
  • ・集水地形および基岩中の地下水流動

(2)誘因

  • ・地盤の劣化
  • ・春~梅雨期の降雨、融雪による浸透水

4.地すべり対策工事

集水井水抜きボーリング山腹工谷止工

地すべりの特徴