国土交通省所管           大平(おおでら)地すべり 石川県
「地すべり技術」掲載号:Vol.29,No.1(2002年7月,通巻85号)
1. 地すべりの概要
大平(おおでら)地すべり地は,能登半島の北端に東北東−西南西方向にのびる能登丘陵の南東端に位置する標高100〜200mの丘陵地にあります。
本地すべりは、昭和35年前後と昭和51年8月の台風による集中豪雨で発生している。後者は面積50,000m2に及ぶ範囲で道路、山林、耕地、宅地に亀裂が入り、家屋の傾斜および基礎の沈下等の被害が生じた。近年、再び道路や人家に亀裂が生じ、傾動するなどの現象が見られたため、地すべり事業を再開した箇所である。

2. 地形概要
大平地区は、概ね南西に10°で傾斜した緩斜面であり、標高80m以高の北西〜南東に連続する斜面は山林として、調査地の中央部は主に畑地として利用されている。民家は、調査地中央より南東部に集中している。地すべりの末端に相当する地区南縁を大平川が東流し、西縁を大平川支流が南流する。対象となる地すべり地は、これらの川や尾根に画された幅300m、奥行き250m、面積7.5haの規模であり、1つの地すべりブロックとして、地すべりの主測線を北東−南西方向にとりA測線とし、北側にB測線、南側にC測線を設けた。

3. 地質概要
調査地に分布する地質は、新第三紀中新世に形成された柳田累層であり、暗灰〜黒色を呈する硬質な玄武岩(Ba)と黄灰色を呈する凝灰岩(Tf)が分布している。すべり面は、玄武岩に挟在する凝灰岩中にあり、光沢のある亜角〜亜円礫を混入する乱された赤褐色の礫混り粘土が厚さ20〜30cmで分布し、すべり面の特徴を有する。この傾斜角は、4°である。

4. 素因・誘因
素因:玄武岩に挟在する凝灰岩中にあり、光沢のある亜角〜亜円礫を混入する乱された赤褐色の礫混り粘土が厚さ20〜30cmで分布し、すべり面の特徴を有する。 誘因:台風による豪雨(昭和35年前後、昭和51年)

5.対策工
豪雨後に地すべりが発生していることから、地下水排除工(集水井工)を主な対策工として計画する。Aブロック全体で既設(W1、W2、W3)、新設(W4、W5)あわせて5基の計画がある。
平成10〜12年度には、W2の堀増しとW4、W5の施工している。その結果、集水ボーリング工からの排水量は、1本当たり15l/minであり、A測線においてΔH≒3mの水位低下が認められている。
地すべりの特徴
  地すべり平面図
  掘削深度と孔内水位
  地すべり断面図
  地下水状況図(BV10‐1)
  地下水状況図(BV10‐2)
  Aブロック孔内水位変動図