国土交通省所管        河内地すべり    鹿児島県
河内地すべり位置図
河内地すべり位置図

地すべりブロック概要図
地すべりブロック概要図

「斜面防災技術」掲載号:Vol.50,No.1(2023年4月,通巻147号)
1.地すべりの概要
 河内地すべりは,種子島南部の南種子島町役場より西方向の約2 km の南種子島町大字中之上に位置する。
 当地区は豪雨のたびに変動状況が顕著になり地すべりブロック内の県道に開口亀裂が生じたり,河川沿いに斜面に崩壊が生じたりして,保全物件に甚大な被害を与える可能性があるため,平成19 年3 月に地すべり防止区域に指定された。地すべり防止区域に指定された後には,地下水排除工や排土工の地すべり抑制工を中心とした地すべり対策が進められ,地すべり防止区域内の6 ブロックのうち4 ブロックが概成となっている。

2.地形・地質概要
 [地形]
 河内地すべりが位置する種子島は,鹿児島市の南南東約100kmに位置する。種子島は長さ約72km,幅5〜12km,周囲150km,面積450km2,最高海抜283mの比較的平らな島である。西海岸は砂丘が発達したなだらかな地形で,東海岸は北東部を除いて急傾斜で崖が多い。種子島は全体的に段丘が良く発達しているのが特徴的である。
 [地質]
 種子島の基盤岩は,四万十帯南帯の最も外側(太平洋側)に分布する熊毛帯に属し,主として砂岩頁岩互層から形成される。
 この層の上を不整合に茎永層群及び増田層,長谷層,竹之川層が覆っている。
 河内地すべり付近の地質は,種子島の基盤である熊毛層群の侵食地形を新第三紀中新世中期の茎永層群が被覆している。茎永層群は,下位層より田代層(礫岩層)・河内層(泥岩層)・大崎層(砂岩層)に区分される。
 河内層は,1,000万年〜1,500万年前に海底に堆積した泥が固結した岩石である泥岩層で構成される。泥岩分布地では,全国的に見ても多数の地すべりが確認されており,新第三紀層地すべりとして分類されている。河内地すべりにおいても過去に地すべりが発生した履歴が,地形図や地表踏査によって確認されている。

3.地すべり状況
 河内地区では,A〜Fブロックの6ブロックが確認されている。このうち,C,Dブロックでは対策工の効果判定の結果,概成となっている。ただし,Bブロックでは対策工施工後も地下水位の低下が認められず,十分な効果が得られておらず,追加対策の検討を行った。

4.地すべり機構
 河内地すべりは,茎永層群の河内層泥岩の流れ盤構造(傾斜角度20〜30°)を素因として,豪雨や河川による斜面末端の侵食を誘因として発生したと推定される。
 地形図に地すべり地形が判読されることから,過去に発生したすべりが,近年の豪雨により地下水の上昇が顕著となり,活動が活発化したことにより県道などの保全物件に変状を生じさせたものと考えられる。

5.対策工
 横ボーリング工(既設)
 集水井工(既設)
 明暗渠工(追加対策工)

地すべりの特徴
 Bブロック追加対策工平面図
 Bブロック地質断面図