林野庁 所管             砥沢(とざわ)地すべり   宮城県 

対策工平面図

「地すべり技術」掲載号:Vol.27、No.3(2001年、通巻81号)
1.地すべりの概要
 砥沢地すべりは県北の栗原郡花山村内にあり、花山湖より北西約6.4kmに位置する。花山村本沢(始点)〜栗駒町文字(終点)間約10kmに及ぶ延長を有する林道花山文字線始点より約1.7〜1.8kmに位置する山腹崩壊地であり、また林道沿いには北上川水系一級河川迫川左支砥沢川が並行する。
 山腹崩壊は、平成11年9月20日に発生し、崩落した土塊は林道を寸断させ、岩塊を混じえながら砥沢川へ流入した。
 中〜下部の山腹崩壊は、二度にわたって発生し、最初は平成11年6月、次いで同年9月20日に崩壊した。最初の崩壊発生後、直ちに対策が計画され、現場打法枠工を導入、同年8月上旬に着工した。二度目の崩壊発生当時は法枠フレームの組立中であり、法面整形およびラス張りが完了していた。最初の崩壊規模は横断幅15m、法面長40mであり、二度目の崩壊規模はその約4倍に相当する。
 平成11年9月20日当時の雨量状況は19mmの日雨量があったものの、当日以前の16〜19日は雨量が全くなく、その前は弱い熱帯性低気圧の停滞により日雨量は、13日7mm、14日26mm、15日99mmと3日間降雨が続いた状況であった。

2.地形・地質概要
 砥沢周辺の基盤岩となる地質は第三紀前〜中新世細倉層が分布するが、特に調査地左方(西方)で露頭する紫蘇輝石普通輝石安山岩溶岩は層厚が厚く、砥沢周辺の代表層である。その上位層として灰色シルト岩、泥岩が調査地右方(東方)に露頭している。
 なお、調査地一帯には、第四紀中期更新世池月凝灰岩に属する角閃石含有普通輝石紫蘇輝石デイサイト火砕岩がこれら基盤岩を被覆して分布する。
 調査地の基盤岩は、南北方向の走向を有し、傾斜は西落ち約28゜である。発生した崩壊方向はほぼ南から北に向かっており、流れ盤型の崩壊である。

3.素因・誘因
 素因:馬蹄形をなす基岩面、転石を多量に含んだ厚い崩積土層
 誘因:降雨による地下水位の上昇

4.地すべり対策工事
 抑 制 工  :横ボーリング工、
 抑 止 工  :グラウンドアンカー工
 法面保護工:切土工、水路工、ロープ掛工、筋工、伏工、柵工
地すべりの特徴
 (1) 調査地全景(左側より撮影)  調査地全景(右側より撮影)
 (2) 地すべり断面図