国土交通省所管           清水山地すべり 長野県 


   位置図                       模式平面図 

「地すべり技術」掲載号:Vol.22,No.1(1995年7月,通巻64号)
地すべりの概要

1.地すべりの概要

 清水山地すべりは、長野県北部小谷村の姫川支流中谷川右岸に位置する。姫川の右岸では、第三紀系の砂岩泥岩やこれに貫入する流紋岩分布域、糸魚川-静岡構造線を形成する断層群に沿って地すべりが多数発生している。清水山地すべりもこのような地すべりのひとつであり、姫川断層の構造に支配された、複雑で多様な性格を持つ地すべり地である。
 清水山地すべりの発生履歴は、古文書によると養老2年(718年)にまでさかのぼることができる。以後、現在にいたるまで融雪、豪雨に伴い地すべり活動を繰り返している。平成6年4月14日に防止区域東部において幅約200m、延長約300mの地すべりが突発的に発生した(VIブロック)。地すべり土塊は土石流化し渓流を約600m流下した。これにより村道が不通となり、人家18戸が孤立する事態となった。

2.地形・地質概要
 当地は、清水山の山腹に位置し、古くからの地すべり履歴により、旧滑落崖を地形変換点とし、山腹内の等高線の乱れが著しい典型的な地すべり地形を呈する。
 清水山周辺には第三紀層の堆積岩とこれを貫く火山岩類が分布する。地すべり斜面には泥岩、砂岩が分布する。また、中ノ沢付近にはかつての地すべりにより、旧中ノ沢がせき止められて形成された湖成層(第四系)が分布する。
 糸魚川静岡構造線の一部である姫川断層は防止区域の西側をNNE-SSW方向に通過している。さらにこれを切るNW-SE方向の断層が存在し、平成6年4月発生の地すべりの頭部を通過している。

3.地すべり機構(VIブロック)
(1)すべり面が形成される地質
・崩積土底面付近:軟弱な粘土[素因]
・強風化岩層内:粘土化の著しい層を挟在[素因]
(2)地すべり発生時期
・豪雪の年の融雪時期
・梅雨期の集中豪雨 → 自由地下水、被圧地下水の急激な増加[誘因]
(3)断層の影響
・断層沿いの破砕ゾーンが地下水供給路を形成[素因]

4.対策工(VIブロック)
(1)中〜深層地下水排除工:横ボーリング工・集水井工
 風化岩中の裂か水を排除し、間隙水圧の急上昇を防止する。
(2)地表水、浅層地下水排除工:開渠工・暗渠工
 地すべり土塊の排水・圧密により地すべり土塊のせん断強度を増加させ、崩積土層内の浅層すべりを防止する。
(3)抑止工:杭工・アンカー工
 抑制工により地すべり活動を沈静化させ、抑止工により計画安全率を確保する。
地すべりの特徴
 全景写真
 各種調査結果対比図
 主ブロック縦断面図
 対策工と安全率