構造改善局所管       板倉(釜塚・段子差)地すべり

新潟県

 

引用文献:地すべり学会新潟支部ほか(1998):新潟県の地すべり’98

地すべりの概要

1.地すべりの概要

板倉地すべりは、第三紀層地すべりの多発地帯である東頸城丘陵の西部に位置し、地すべり防止区域「釜塚」・「段子差」に指定されている。地すべりの規模は長さ、幅とも2km、面積は200haにおよぶ大規模なものである。

本地域周辺の地すべり被害は、言い伝えとしては鎌倉時代からあり、地すべり被害を止めるための人柱伝説が語り継がれてきた。昭和12年には人柱の人骨が実際に発見されている。

近年の地すべり被害は、明治中期に、農地5ha、人家5戸、県道が被災した記録がある。また昭和63年春には地すべりが県道を切断し、地すべり末端を流れる大熊川をせき止めた。

 

 

2.地質概要

大規模地すべりは、新第三紀中新世の寺泊層および椎谷層の泥岩で構成されている。この泥岩は一軸圧縮強度が200kgf/cm2以下の軟岩である。さらに褶曲構造や断層が発達しており、岩盤強度はより低いと考えられている。

釜塚・段子差地区の東側には、節理の発達した安山岩貫入岩体が存在し、地下水を涵養、貯留する役割を果たしている。

 

 

3.地すべり状況

(1)大規模地すべり

地すべり中央部において、孔内傾斜計観測により深度137mで、24cm/年の移動が確認されている。GPSによる移動観測でも、34cm/年の移動が確認されている。

 

(2)二次三次地すべり

大規模地すべりの末端部では規模の小さな二次、三次地すべりが活発に活動している。地すべりの発生時期は6割以上が4月に集中している。

 

 

4.地すべり機構

[素 因]

・新第三紀の泥岩を主体とした軟質な地層。

・背斜軸の存在による岩盤強度の低下(大規模地すべり冠頭部付近)

 

[誘 因]

二次・三次地すべり

・大規模地すべり上方の丈ケ岳(安山岩貫入岩体)からの豊富な地下水供給。

・高透水性の大規模地すべり陥没帯から、大規模地すべりのすべり面、側方部を流下する地下水が、二次・三次地すべりブロックに供給される。

・緩慢な大規模地すべりの活動により、末端に位置する二次・三次地すべりが活性化。

 

大規模地すべり

・二次・三次地すべりの発生により大規模地すべり末端部が欠落することで、不安定化する。

 

 

5.地すべり対策

大規模地すべり

すべり面深度が140m以上と深いこと、丈ケ岳斜面から供給される地下水が地すべりの誘因であることから、排水トンネル工を主体とした地下水排除工が採用されている。

冠頭部の陥没帯では、浸透水排除を目的とする集水井工も配置されている。

 

二次・三次地すべり

活動度、重要度に応じて抑制工、抑止工を組み合わせている。

地すべりの特徴

 板倉地区全体模式図

 大規模地すべりと二次三次地すべりの関係

 釜塚・段子差大規模地すべり対策工計画概念図

 直轄地すべり対策事業概念図(釜塚・段子差区域)