農村振興局所管                  灘手地区地すべり
大分県

        対策工平面図(第一地区)                    位置図
                                     
                              「斜面防災技術」掲載号:Vol.34,No.3(2008年3月,通巻 102号)

地すべりの概要

1.地すべりの概要
杵築市大字守江にあり,国道213 号と江頭川に挟まれた丘陵地である。当地すべりの地域面積は50.51haで,平成11年度に地すべり指定を受け,それに伴い平成12年度に第1地区,平成13年度に第2地区,平成14年度に第3地区が順次採択され,調査・対策工が実施されている。地すべり保全対象である耕地面積は,37.51haに及び,過去より毎年畦畔を含む農地や農業用水路に地すべりに起因する亀裂,沈下などが発生し,被害を受けてきた。

2.地形・地質概要
(1)地形概要:当地区の大半は,標高7080mの起伏山地〜丘陵地を呈し,斜面の形状により,西部地区と東部地区に分けられる。西部地区は全体に南側(海側)5°程度で緩やかに傾斜した,海岸侵食により形成された地形であり,斜面末端部は海岸侵食により急崖を成す。一方,東部地区は主に江頭川に向かって傾斜した斜面で,斜面部は5°程度の丘陵地であるが,末端部は江頭川周辺の侵食前線にあたり2030°の比較的急な斜面を呈す。
(2)地質概要:主に宇佐層を不整合に覆う新第三紀鮮新世の馬場層が広く分布している。下位より凝灰質シルト岩,凝灰岩,凝灰質礫岩,凝灰岩,凝灰質礫岩が確認されている。凝灰岩は,全体に風化作用により軟質な粘土となり,層厚は数10cm程度で,標高510m7080mに2層確認されている。構造的に若干傾動を受け,地形斜面に対し「流れ盤」を示す。一方,凝灰質礫岩は,層全体の厚さは2030mに及び,丘陵地の主体をなし,固結するが亀裂が多く,帯水層の様相を呈し,いわゆるキャップロックとなっている。

3.素因・誘因
(1)素因:1)地質的に地すべり粘土に形成しやすい凝灰岩が構造的に流れ盤となっていること,2)凝灰岩の上位のキャップロックとなる凝灰質礫岩が,地下水の供給源または重荷となっていること,3)多くの地下水が当地区に供給され常に地下水位が高いことにある。
(2)誘引:1)降雨による地下水位の上昇による間隙水圧の増加や地表からの雨水の浸透がキャップロックにため込まれた結果起きる有効応力の増加,2)地下水浸透に起因するすべり面粘土の膨張によるせん断抵抗力の減少,末端斜面の崩壊進行によるせん断応力の増加などによる。

4.対策工
1地区:水抜きボーリング工1基,集水井工7基と排土盛土工を実施。
今後,水抜きボーリング工3基と抑止杭工などを行い,概成とする予定。

地すべりの特徴
地すべり断面図
灘手地区の空中写真とブロック割り
大分県の地質