林野庁 所管            久ノ元(くのもと)地すべり 島根県

地すべり平面図                     位置図

「地すべり技術」掲載号:Vol.29,No.2(2002年11月,通巻86号)
地すべりの概要
1. 地すべりの地概要
 久ノ元地すべり地区は大原郡木次町大字西日登地内の町中心部から南南東約2.5kmの地点に位置し、平成2年10月2日に10.07haが地すべりの指定を受けた。当地すべり地は分水嶺および河川流域を境に久ノ元地区(久ノ元川)と水谷地区(水谷川)の2地区を包含する。A〜Dブロック(久ノ元)は、平成元年度〜11年度に危険度の高い順に対策工の施工を受け、Fブロック(水谷;指定面積0.56ha、斜面長160m)は平成13年度調査および対策工の施工が行なわれた。
  Fブロックは、馬蹄形の細長い沢状地形を呈し、頂部の標高98m付近に斜面のクリープを示す特徴が、このクリープ下部に頭部滑落崖が観察される。また、脚部は水谷川に近い標高56m付近であると推定される。地すべり移動層厚は約10mで、移動土塊は粘性土(砂質シルト)を主体とする崖錐堆積物と花崗閃緑岩の強風化土であり、すべり面は軟弱でシルトを挟在する基底風化層と推定され、その下位にある不動層基岩は花崗閃緑岩(軟岩T)であるため、上部〜中央に厚く堆積した軟弱な崩積土を移動主体とする「崩積土地すべりである。

2.地形・地質概要
 本地区周辺の地形は頂部標高200〜400mの緩やかな山地とその谷部に形成され、標高50〜60mの谷底平野を一級河川斐伊川およびその支川が南から北に向かって流下している。
  Fブロックは、緩斜面に崖錐堆積物が被覆しており、典型的な集水地形を呈する。ここでの地すべり斜面は水谷川に隣接する緩やかな凹型斜面であり、この緩斜面には崩積土を中心とした砂質粘土や砂質土の崖錐堆積物が厚く堆積している。 地区周辺には古第三系の深成岩である花崗閃緑岩が基盤として分布していて、それらを覆って第四紀の崖錐堆積物と現河床堆積物が各々、沢部と河床部、平地部に分布しているが、花崗閃緑岩は深部まで風化作用が進んでおり、マサ化した状態の露頭が一帯で見受けられる。

3.素因・誘因
(1) 素因: @花崗閃緑岩のマサ化、厚い風化帯の形成 A沢状の集水地形 B湧水の常在による土塊強度低下 C過去の崩壊による土塊の緩み
(2)誘因: 降雨による間隙水圧の上昇

4.対策工
 ボーリング暗渠工,杭打工

地すべりの特徴
 地すべりFブロック全景
 対策工計画平面図
 対策工計画断面図
 島根県の地質図