建設省所管    口坂本(くちさかもと)地すべり    静岡県

静岡県の地質



口坂元地すべり平面図

「地すべり技術」掲載号:Vol.25、No.1(1998年7月、通巻73号)
1.地すべりの概要
 口坂本地すべり防止区域は、静岡市中心部より北北西約25kmの安倍川上流域に位置する。地すべり防止区域最下端には口坂本温泉街の集落がある。
 口坂本地すべりは、昭和35年に地すべり防止区域に指定された面積185.94haの広大な地すべり地である。防止区域は、巨視的に見ればほぼ尾根の稜線から沢筋まで、凹型かつ扇型の斜面形状を示しており、最大幅約2、000m、長さ約2、000mに達する。尾根の直下には傾斜が30〜35度、比高50m程度の斜面が連なり、その下部は平担面となる。さらにその下部には平均傾斜約20度ほどの斜面が続くが、地すべりによる変状はこの斜面を中心に発生している。そのため等高線は乱れ、階段状の段差が広く分布している。
 防止区域指定後、大規模な災害としての記録は特に残されていないが、昭和63年7月の梅雨期における豪雨によって顕著な変動が認められ、1日最大約40cmと、地すべり土塊がすべて崩落しても不思議ではない極めて大きな移動量を記録している。
 口坂本地すべりで特に変動が活発なブロック範囲は、分水嶺直下の傾斜が30〜35度、比高50m程度の斜面を頭部とし、末端にかけて急斜面と平坦面が交互に存在する。側部は両側とも沢により規制されており、末端部は広範囲な崩壊地となっている。規模は最大幅約300m、奥行約600m、移動土塊の層厚約50mの大規模な破砕帯地すべりである。

2.地形・地質
 当地すべりを含む山稜は、大井川流域と安倍川流域の分水嶺となっており、この尾根は標高1,300〜1,500mほどで北北東−南南西または北−南方向に標高を減じながら連なっている。勘行峰から口坂本に南北に伸びる尾根沿いには笹山構造線が走っており、その西側斜面には幅50〜400mの広い緩傾斜地が連続して存在する。山腹にはガリー状に侵食地形が発達しており、そのうちのいくつかは地すべり範囲の側方を規制している。
 地質的に見ると、静岡県中西部地域には糸魚川−静岡構造線に沿ってほぼ南北に四万十帯が広く分布する。この四万十帯の地質は糸魚川−静岡構造線に支配されており、北東−北北東の方向性をもって帯状に分布している。
 笹山構造線の西側には白亜系(〜古第三系)の三倉層群が分布している。三倉層群は笹山構造線を介して、その上位の瀬戸川層と接する。位置的には調査地域に分布する地層は三倉層群としている。
 三倉層群は単調な砂岩一頁岩互層が卓越する海成層で、全体にN20〜40°Eの走向を以て北に傾斜している。地質は著しくせん断され、無数の小断層、小摺曲が認められる。

3.素因・誘因
(1) 素 因
   地 形−集水地形
   地 質−構造線起因の破砕帯、強風化岩盤(頁岩)
(2) 誘 因
   降雨に起因する地下水上昇、間隙水圧増大

4.地すべり対策工事
 地下水排除工(集水井、排水トンネル、横ボーリング工)、末端崩壊防止(植生ネット工)
地すべりの特徴

  口坂元地すべりB測線断面図