取材内容

<1.全般>

研究室の目的

質問1:防災システム研究センターと水・土砂防災研究部の全体としての研究目的は何ですか?

回答1

     防災システム研究センターは現実社会での防災現場に役立つような研究成果の創出を行い,その研究成果の公開を幅広く進めることを目的としています。

     水・土砂防災研究部は風水害および土砂災害を軽減するための,基礎的な技術開発を行っています。

     研究所全体では,阪神大震災の後,地震分野の研究が中心となってきました。


役割分担

質問2:防災システム研究センターと水・土砂防災研究部との役割分担は?

回答2

     水・土砂防災研究部では基礎的な研究開発を行い,防災システム研究センターでは成果を広く一般に提供するための情報システムの構築や運用を行っています。

      

 

他の研究機関との違い

質問3:地すべりに対するアプローチで他の研究機関との違いはありますか?

回答3

大型降雨実験装置を用いた研究

大型の模型斜面を用いて,崩壊時刻の予測や,崩壊土砂の流動化過程の実験を行っています。

 

マルチパラメータレーダ(先端型気象レーダ)の活用

高分解能(500mメッシュ),高精度で降雨分布を推定できるマルチパラメータレーダを活用して,豪雨時の崩壊危険域推定に関する研究を行っています。

 

地すべり地形分布図の刊行

地すべり研究全般に関する基礎データの作成を目標に始めた研究です。1997年の澄川地すべりなどを契機に地すべり発生場所の予測にも役立つ図として研究者以外からも注目されるようになり,Web公開を先行的に開始しウェブマッピングの分野からも注目されています。

 

主な活動場所

質問4:主な活動場所(事務所内?フィールド?)はどこですか?

回答4

     大型降雨実験はつくば本所で実施しています。

     マルチパラメータレーダは1号機が神奈川県海老名市,2号機が千葉県木更津市に設置されています。

     地すべり地形判読は所内で進めています。現在の確認調査は時々に,それぞれの地域を対象に行っています。

 

研究成果の主な発表場所

質問5:研究成果の発表はどのような機会におこなっていますか?

回答5

     各種学会での発表(日本地すべり学会,地盤工学会,気象学会等)

     研究所の成果報告会(2008年は3月に静岡市で行われる。)

     講演・防災教育(東京消防庁,APEC研修ほか)

     地すべり地形分布図は印刷図を関係自治体・関連大学研究所に650部程度配布するとともに,できるだけ早期にWeb公開を行っています。Web公開ではWMSを取り入れ,他サイトとの連携についても便宜をはかっています。

 

<2.個別研究の進捗状況と今後の方向性>

現在進めている個別研究課題

 

研究課題(1):地すべり地形分布に関する研究

質問7:今取り組んでいる研究概要

回答7

日本全国の地すべり地形の分布状況の把握を目的に,地すべり地形判読を進めています。

 

質問8:現時点の研究成果の中で特に特徴的なことは?

回答8

本州・四国・九州の地すべり地形判読完了。

本州・四国の大部分の地すべり地形分布図を刊行。

Web-GISによる地すべりマップのインターネット公開を推進している。

 

質問9:今後の研究の方向性は?

回答9

     引き続き全国刊行を目指して北海道の判読を進めるとともに,未刊行・Web未公開の地域の早期刊行・公開を目指す。

     地すべり地形分布図の有用性,利用方法に関する広報普及活動の推進。

     既往斜面災害のデータベースの充実化

     また,地震による土砂災害の発生場の予測手法の開発などにも取り組んで行きたい。

 

研究課題(2):マルチパラメータレーダを用いた土砂災害予測

質問10:今取り組んでいる研究概要

回答10

マルチパラメータレーダは雨粒の変形の程度によって雨量を計測できるシステムで,気象庁などのシステムより高精度である。このマルチパラメータレーダによる予測雨量を活用し,1時間先の表層崩壊の危険域を50m格子で予測できる技術,変動し始めた斜面の崩壊時刻の早期予測技術,並びに実地形を考慮に入れた崩壊土砂の運動モデルによる被災範囲の予測技術を構築し,これらの技術を第1期中期目標期間において開発した土砂災害発生予測支援システムに取り組むことにより高度化する。

 

質問11:現時点の研究成果の中で特に特徴的なことは?

回答11

     マルチパラメータレーダのデータをリアルタイムで処理し,実効雨量(半減期を考慮した雨量)を約5分更新で公表している。

土砂災害発生予測支援システム(LAPSUS)

http://lasus.bosai.go.jp

     崩壊発生時の斜面の内部歪を早期に検知するセンサーの開発

 

質問12:今後の研究の方向性は?

回答12

     マルチパラメータレーダの,土砂災害危険域監視における有効性の確認と実用化。

     現地斜面に適用可能な,安価なセンサーの開発。

     複合災害(地震と地すべり,融雪と地すべり)に関する実験研究。

 

 

<3.共同研究について>

今後の方向性

質問13:今後の方向性,予定しているテーマ

回答13

     降水短時間予測に関する研究

     大型降雨実験施設を活用した研究など

 

共同研究の手続き

質問14:共同研究の手続きについて教えてください?

回答14

研究担当者に直接連絡をとって下さい。最終的には「共同研究契約書」を締結することになります。

 

 

<4.施設の利用方法>

斜面防災関連で利用可能な研究施設

質問15:斜面防災に関するどのような研究施設がありますか?

回答15

・大型降雨実験施設

 

斜面防災に関する研究施設の利用頻度

質問16:斜面防災に関する研究施設の利用頻度はどの程度ですか?

回答16

年間10件程度

 

斜面防災に関する研究施設の利用申込み方法

質問17:斜面防災に関する研究施設の利用申込み方法を教えてください?

回答17

下記のページをご覧下さい。

http:/www.bosai.go.jp/sougou/dasha/rain/kohushisetsu.html

 

 

<5.その他>

研究成果の入手方法

質問18:過去の研究成果を入手する方法を教えてください?

回答18

公表されている研究所の年度評価資料をご覧下さい。以下からダウンロードできます。

http://www.bosai.go.jp/kokai/johokokai/johoteikyo/nendohyouka.html

 

民間企業に期待すること

質問19:民間企業に期待することは何ですか?

回答19

・新しい技術の共同開発,共同研究

 

協会HPについて

質問20:当協会のHPをみたことがありますか?

回答20

・見たことがある。大変よくできている。

 

 

<6.取材後記>

最初,敷地内にある研究交流棟に案内されて,研究所全体の施設や研究内容の紹介を受けました。ガラスが多く採用された開放的な建物で,研究内容等をわかりやすく説明したパネルや模型,K-netのリアルタイムの加速度モニターなどが並び,外部からの訪問者に対する配慮が感じられる施設でした。

大型降雨実験施設も,人口降雨装置を付けた巨大な建物がレールの上を数百mも移動するシステムに驚きました。

このような良い施設をもっと多くの人に知って頂き,活用されるようになれば良いと思います。

突然の取材依頼でしたが快諾頂き,快く質問に答えて頂いた井口総括主任研究員及び酒井研究員に大変感謝しております。どうもありがとうございました。

(文責:斜面防災対策技術協会 ホームページ委員会 委員長 榎田)

 


<7.各研究員について>

@(井口隆 総括主任研究員

(1)この道に進んだ理由は?

・学んできた専門分野をいかした研究ができ,社会にも役立つ成果につながると考えたから。

(2)専門分野は?

・応用地質学

(3)出身校,学部:

・北海道大学地質学鉱物学科

(4)趣味は?

・ウォーキング

 

A(三隅良平 主任研究員(20084月より本研究室)

(1)この道に進んだ理由は?

・自然現象に関心があったから

(2)専門分野は?

・気象学(雲物理)、自然災害

(3)出身校,学部:

・名古屋大学大学院理学研究科

(4)趣味は?

・月面の観察

 

B(酒井直樹 研究員

(1)この道に進んだ理由は?

・小さいころから地震・火山に興味があったから。

(2)専門分野は?

・地盤工学

(3)出身校,学部:

・長岡技術科学大学大学院工学研究科

(4)趣味は?

・林道ドライブ,夜更かし