擁壁工
制作:ライト工業(株)

1. 工事概要

本工事は,寺院の墓苑にあるブロック積み擁壁の補強として,張りコンクリート工を施工した事例である。当該地の地盤は,ローム層で自立することから,既設擁壁の施工に際しては,切土の補強は実施していなかった。既設擁壁は,施工後20年以上立ち,一部ブロックのはらみだしが見られたため,既設擁壁の前面に張りコンクリートもたれ擁壁を構築することとなった。

        






2. 対策工の諸元
前述のように,ブロック積み擁壁の一部ではブロックのはらみ出しが見られたが,擁壁天端の変状や,擁壁全体の変形などが無いことから,既設擁壁に外力が作用していないと判断し,ブロックの抜け落ち防止として,張りコンクリート工が採用された。
張りコンクリート工の施工に当たり,現地盤から50cm程度の床掘りが必要なため,擁壁高さが高い箇所については,床掘り時の斜面安定を維持させることを目的に,鉄筋挿入補強土工を検討した。

(1) 鉄筋挿入補強土工

鉄筋挿入補強土の検討に際しては,照査する地盤情報が不足していたため,経験的手法にて補強土工の仕様を決定した。


               表-1  補強土工の諸元
        

項   

経験的設計諸元

当該現場の諸元

φ65mm以上

φ65mm

D19D25

D19

2.03.0m

3.0m

打設密度

2m2当たり1

1.5mピッチ

角  度

水平下向き10

〜のり面直角

擁壁に直角










備考:「道路土工
切土・斜面安定工指針」(社)日本道路協会H21.6 p304を加筆

(2) 張りコンクリートもたれ擁壁

コンクリート張り工は,コンクリート擁壁工とモルタル・コンクリート吹付け工の中間に位置づけられ,土圧の作用がない箇所に用いられる。既設擁壁は,勾配が1:0.5であるため,鉄筋コンクリート仕様とした。以下に,標準構造図を示す。

                   

3. 施工状況

施工は,鉄筋挿入補強土工により既設擁壁を補強した後に,床堀り・張りコンクリート構築の手順で行った。なお,張りコンクリートの前面は,墓苑の性格上化粧型枠にて石張りを模した仕上げとした。