横ボーリング工
制作:利根コンサルタント(株)

1.概要

横ボーリング工は、地下水を排除し、これによって、すべり面に働く間隙水圧の低減や地すべり土塊の含水比を低下させることを目的としている。集水井工、排水トンネル工に比較し、施工が容易な工法である。多くの地すべり地で施工されている。

2.設計技術

設計に際しては、周辺の地形・地質および地下水調査等から、地すべり面に関与する滞水層の分布を的確に把握することが重要である。この滞水層に対して、最も効果的に集水できるようにボーリングの位置、本数、方向および延長を決定することになる。

(1)建設省河川砂防技術基準()同解説による設計

横ボーリング工は、通常、浅層地下水の集中している部分に設けるものとし、ボーリング先端での間隔が5〜10mとなるよう放射状に設計する。集水した水は、集水桝や排水路を通じて速やかに地すべり地域外に排水するものとする。孔口の位置は、安定した地盤に設け、排水による孔口の崩壊を防止するための保護工を設置する(図:横ボーリング工の配置図、ボーリング工の孔口保護工参照)。

掘進勾配は、集水した地下水が自然流下するように概ね仰角5〜10度とし、掘進孔径は66mm以上とする。長さは、目的とする滞水層、またはすべり面からさらに5m以上先まで余裕長をもったものを標準とする。地すべり地域の地質が粘質土等で透水係数が低い場合は、孔径を大きくする等、集水量の確保を図る設計を検討するものとする(図:横ボーリングの配置図)。

掘進終了後には、目的とする滞水層区間にストレーナ、またはスリット加工を施した硬質塩化ビニール管や鉄管等の保孔管を挿入する。管の先端部については、土砂が入り目詰まりを起こさないよう処置を施す。管の継手はソケット継手、または突合わせ継手とする(図:保孔管にストレーナ加工の例)。

(2)その他の設計手法

横ボーリング工の扇の角度(打設角)を、平均的水位低下高(目標水位低下高)、透水係数、地下水滞厚、管半径、から求める計算式が提案されている。詳しくは、「治山技術基 準解説 地すべり編」(林野庁監修)等を参照されたい。

3.留意点

1)横ボーリング工を施工するスペースとして、孔口から背後(地表側)に最低3.5m必要である。一般には5m程度以上のスペースが望まれる。

2)既設の調査ボーリング工やアンカー工、鋼管杭に当たらないように掘削方向、掘削長を設定する必要がある。

3)維持管理を考え、口元の構造として、洗浄する用具を挿入できるように脱着可能なキャップを付ける場合がある。

4)長期の機能維持を考え、保孔管としては、塩化ビニール管を用いることが多い。鉄管は湧水が多い時等、保孔管挿入時に管に圧力をかける必要がある場合に用いている。ただし、使い分けに明確な基準はない。

4.施工例