抑止杭工
制作:日特建設(株)

1.地すべり抑止工としての杭工

 抑止杭工は、あらかじめすべり面を切って鉛直に削孔した大口径のボーリング孔に、鋼管やH鋼などを挿入し、充填グラウトにより地盤に密着させて、すべり力に抵抗しようとする工法です。地すべり移動層が何らかの誘因で変位したとき、初めて変形し抵抗力を発揮するタイプの、いわゆる待ち受け型の工法です。
2.抑止杭工の分類

(1)機能による分類
 移動層のすべり力と杭の抵抗力がつりあったとき地すべりも停止しますが、このときの杭の変形は、杭の設置位置・長さ・鋼性、移動層の状態などにより異なり、それによって設計法も異なります。一般に次の4つの計算式が提案されていま
(2)杭材料による分類

3.抑止杭工の設計

(1)設計手順
 一般的な設計は次のような流れで行われます。
(a)安定計算により単位幅当たりの必要抑止力Pを求める。
(b)Pが杭に作用することによって生じる内部応力の最大値を計算する。
(c)鋼材1本当たりの許容応力と算出した内部応力の最大値より、鋼材1本当たりの負担幅としての必要杭間隔を算出する。

 具体的な設計作業の手順を図4に示しました。
(2)設計上の留意点
(a)抑止杭工は、移動層が一体として動いていることを前提としています。このため、流動現象を伴うような軟弱地盤や、多くの亀裂により移動層が細かく分断されているような地盤には適しません。
(b)設計式の選定に当たっては、各式の特徴をよく理解した上で、地すべりの深さ、移動層の状態、安定度、施工位置の制約等を考慮して、適切な設計式を選定することが重要です。
(c)杭の設置位置は、谷側移動層の有効抵抗力、山側移動層の受動破壊、杭設置地点の移動層の変位量、保全対象、地盤の性状、施工性等を勘案して選定します。
(d)杭の配置は原則として単列(間隔が1m未満の場合は千鳥配置)とし、標準間隔は右表のような目安1)が示されています。

4.施工手順


 大口径ボーリングマシンによる抑止杭工の一般的な施工手順を図5に示します。

(1)削孔
 削孔は、やぐらに据付けられたボーリングマシンにより、通常、鋼管径よりも50〜100mm程度大きい径で行われています。削孔方式としては、泥水を用いたロータリーボーリングによる削孔、圧搾空気で先端ビットにより孔底をたたいて削孔するエアハンマー(ダウンザホールハンマー)による掘削、大口径のケーシングによる掘削(オールケーシング)などがあり、各々、使用に適した条件があります。抑止杭工施工において、削孔方法や削孔器具の選定はとりわけ工費・工程に大きな影響を与えるので、地盤条件にあった削孔方法、削孔器具の選定が重要となります。

(2)鋼管建込み
 杭の建て込みは削孔終了後直ちに行います。建込みは、6〜12mの鋼管を吊り下げながら順次溶接して所定深度まで自重挿入する、あるいは、あらかじめ所定の長さまで溶接した杭をクレーン等で挿入するなどして行います。これまで継ぎ手部は溶接で行われていましたが、最近、継ぎ手がネジ式となった鋼管杭も使用されています。

(3)中詰め・外詰め工
 建て込み後、清水により管内を洗浄し、鋼管内をモルタル、生コン等で充填します。管の外周は、あらかじめ取り付けられている注入管を用いて、モルタル、セメントミルクを充填します。加圧はしませんが、掘削泥水等と完全に置換するように孔底から行います。

(4)頭部連結
 杭を千鳥配置とし、頭部を鉄筋コンクリーにより連結する頭部連結の効果は、十分解明されておらず、「行わない」とする基準もあります。文献1)では、抑え杭に対しては、不均質な地盤において局所的に過剰に生じた外力を分散させる目的で、原則として連結することとしています。ただし、設計にはその効果を見込んでいません。
(5)施工中の留意点
 地すべり地における抑止杭の施工に当たっては、特に次のような点に注意が必要です。
(a)削孔方式や器具の選定が、施工性に大きな影響を及ぼすので、地質・岩質に応じた最適な方法・機種を選定する。
(b)孔曲がりに注意し、穿孔の垂直性を保持する。
(c)作業スペース確保のために切土・盛土を行う場合は、斜面の安定性に十分注意する。重機の自重、振動が斜面の安定に与える影響にも注意する。
(d)泥水を用いる場合はその管理に留意する。漏水がある場合は、スライムの排出効率が低下し施工性が低下する、孔壁の安定に悪影響を及ぼす、周囲の環境を汚染する、地すべりの安定性を低下させるなどの問題がある。
(e)施工中の振動、騒音などに留意する。

(引用・参考文献)
1) 新版 地すべり鋼管杭設計要領/監修:社)日本地すべり学会、発行:社)斜面防災対策技術協会