光ファイバを利用した地表動態調査 

                                                      制作:(株)興和

 

 

 

 

 光ファイバのイメージ 

1.概要

 光ファイバは普通は通信に使われますが、光ファイバ自体をセンサとして利用するすることも可能で、
 光ファイバの次の特性を生かすと、屋外計測の有効な手法となります。
 光ファイバセンサの特徴は次の通りです。

·         センサ部に電気を使用しないため、雷の被害を受けにくい。

·         光ファイバは数10kmの伝送能力を持つので、長距離、広域の計測が可能。

·         1本のファイバで複数地点の計測が可能。

 地すべり計測においても、従来の点の計測から、線や面、あるいは3次元の計測も可能になります。

        光ファイバセンサによる線・面の計測イメージ

2.光ファイバセンサの原理

(1)測定方法

 光ファイバセンサには多くの計測方法がありますが、土木関係では、従来のひずみゲージの置換えが主になります。光ファイバに外力が加わると、ファイバにひずみや変形が生じ、光の通りかたが変化します。この、光の通り方を測定する方法は大きく分けて4つあります。

主な光ファイバセンサの測定対象

検出対象

計測

方式

センサ・測定器名称

光の透過量の変化

ファイバの曲げによる

透過量の変化

マイクロベンディング

MDM

OSMOS

光の反射量の変化

ファイバの曲げによる

後方散乱反射量の変化

レイリー散乱

OTDR

光の反射波長・周波数の変化

ファイバの特定区間の

反射光の波長変化

ファイバグレーティング

FBG

ファイバ全区間の

反射周波数変化

ブリルアン散乱

BOTDR

(2)位置の特定

 光ファイバセンサは、光ファイバの長距離伝送の特徴を生かし、長い区間や遠隔計測を行うこともできます。
 変状位置の特定は

·          光ファイバの測定する区間だけ、センサとして機能するファイバを挿入する → FBGなど

·          光が反射して戻るまでの時間から距離計算する → OTDR, B−OTDRなど

 光ファイバセンサを使う場合は、対象物によって、これらの計測範囲(点か線か)を考慮する必要があります、

3.代表的なセンサ

 地すべり地に、適用可能な光ファイバセンサの代表的例として、B-OTDR方式とFBG方式を紹介します。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

地すべり地における光ファイバセンサの計測イメージ

(1)FBG方式

FBG方式は、光ファイバによる「ひずみゲージ」です。従来の電気式のひずみゲージを利用していた部分に適用できます。電気式に比べて、雷に強い、ことや、1本のファイバに複数の、FBGセンサを直列に接続可能などの特徴があります。
精度はひずみ量で±0.0004%で、ポイントごとの細かい計測が可能です。
具体的な用途としては以下のものがあります。

·          アンカーの荷重・伸び計測

·          伸縮計

·          水位計(水圧式)  

  アンカに取り付けたFBGひずみセンサ   アンカの引っ張り試験

(2)B-OTDR方式

B-ODTR(ビ゙ー・オー・ティーディーアール)は、光ファイバのひずみを測定する、測定器の名称です。
センサ用のファイバは、通信用として一般的なSM型ファイバを利用し、10km程度の区間のファイバのひずみを、距離分解能1〜5mで測定できます。
ひずみ測定精度は,室内レベルでは±0.003%程度有りますが、屋外の地盤に設置した場合の、総合的な測定精度は、±0.01〜0.1%くらいです。ひずみの最大測定値は、ファイバが切断する3〜4%です。
具体的な用途としては以下のようなものがあり、測定範囲が広い場合に有利です。

·         斜面の動態監視

·         堤防監視

·         地すべり観測

·         水位計(多連式) など

 斜面上でのファイバセンサ布設   B-OTDRの計測画面(横軸:距離、縦軸:ひずみ) 光ファイバ式の水位計

1)光ファイバの固定

 B-OTDR方式の光ファイバセンサは、ファイバの伸び方向のひずみだけを検知します。従って光ファイバセンサで地盤の動態の計測を行う場合、光ファイバセンサを、一定区間ごとに、地盤に固定する必要があります。ファイバ固定方法の一例を示します。

   巻き付け式のファイバ固定冶具       挟み付け式のファイバ固定

2)光ファイバの張る方向

 光ファイバは、伸び方向のひずみしか検知しないため、ファイバの布設ラインは、地盤の動きの方向に設ける必要があります。

    光ファイバは変位の方向に沿って布設します

3)光ファイバの保護

 光ファイバ自体は、細いものなので、屋外に布設する時は保護が必要です。保護チューブの例を示します。

  金属管に入った光ファイバ心線     金属フレキシブルチューブに入った光ファイバ

4.設置例

 新潟県東頸城郡牧村の沖見地すべり地に設置された光ファイバセンサの施工状況を紹介します。
この地すべり地では、独立行政法人 土木研究所新潟試験所により、FBGセンサによるアンカ計測と、B-OTDRによる地すべりの観測が行われています。

2001/01/9朝のNHKニュースより

光ファイバセンサの埋設

光ファイバセンサの布設

現地の施工状況です。

観測地すべりブロック全景

ファイバ埋設溝の掘削状況

ファイバの張力調整