林野庁所管 徳成谷内地すべり 石川県

「地すべり技術」掲載号:Vol.41,No.3(2014年、通巻122号)

「地すべり技術」掲載号:Vol.41,No.3(2014年、通巻122号)

1.地すべりの概要

徳成谷内地すべりは輪島市市街地の東方約17kmに位置し町野川左岸側の徳成地区徳成谷内地区麦生野地区に分布する。
往時より融雪期・豪雨期には小規模な地すべり性崩壊やそれに伴う集落背後の亀裂湧水の現象がありその発生年数は3~8年周期とのことである。昭和34年7月の能登水害より地すべり性の山腹崩壊が活発となりこれに対して昭和39年より防止工事を始めた。その後の昭和48年3月に地すべり防止区域に指定されている。

平成5年度以降には下記のような地すべり災害が発生した。

<平成5年の災害>
発生規模は奥行き約60m幅約70m比高約35mである。平成5年9月17日の朝徳成谷内地区の東側にある人家の裏山に段差1mほどの亀裂が発見されさらにその人家の床が隆起した。終日の雨で表層の小崩落と亀裂の拡大があり午後8時30分頃裏山が崩れ木造二階建て住宅と土蔵が全壊し隣接する人家の木造二階建て作業場の一部が壊れた。この災害で4世帯に避難勧告が出た。
<平成9年の災害>
発生規模は奥行き約80m幅約50m比高約25mである。平成9年5月21日の早朝徳成谷内地区南側の徳成川右岸側において段差1mほどの亀裂が発見されその後2~3cm/時の移動が計測された。当日深夜には末端部上流側で幅20mの崩壊があり河川の閉塞・氾濫が警戒された。この災害で2世帯に避難勧告が出た。

2.地形・地質

地区中央部を流下する町野川支流徳成川に沿って徳成徳成谷内の集落がある。その西側には標高168mの山頂から東に傾斜する斜面があり東側には南北にのびる標高100mほどの丘陵がある。この丘陵の東側に麦生野地区があり町野川に面して河川敷は水田になっている。

地すべりの特徴として徳成谷内は山麓部が緩斜面となり崖錐が分布し地すべり地形を呈する。初期の地すべり対策工事が実施された箇所である徳成谷内地区は斜面の平均傾斜約10〜15°となだらかであり典型的な地すべり地形を呈しており、大きな地すべり災害を経験する。麦生野地区は斜面の平均傾斜約25°と急である。

新第三紀中新世の砕屑岩類火砕岩類が分布する。それらは柳田層東印内互層栗蔵凝灰岩層とよばれるものである。柳田層はデイサイト質火砕岩や凝灰質堆積岩からなり東印内互層は砂岩・泥岩・礫岩の互層からなる。栗蔵凝灰岩層は灰白色の軽石凝灰岩が主体である。これらは概ね北にゆるく傾斜した構造である。

3.素因・誘因

(1)素因

  • ・固結度の低い岩盤と、流れ盤構造
  • ・地層構造に沿う地下水流動
  • (2)誘因

    • ・長雨による地盤の劣化
    • ・梅雨秋雨期の豪雨、融雪による浸透水

4.地すべり対策工事

排土工、水抜きボーリング、土留工

地すべりの特徴