林野庁所管             猪鹿倉地すべり    熊本県  
南部九州地質図
                               掲載号:vol.31 No.3(2005年3月、通巻93号)

1.地すべり概要
 猪鹿倉地すべり地は、熊本県南部湯前町の北東約6km、球磨川支流牧良川の最上流部に位置する。地すべり地は、牧良山(標高990.5m〉から西方に伸びる尾根の北西斜面に位置し、標高800〜900m区間、斜面の平均傾斜は約30°で遷急点となる標高875m付近に滑落崖が形成されている。
 平成9年に牧良川の最上流で大規模な崩壊が発生。地すべり規模は、幅100m、斜面長80m。
 地すべり地の左側壁部〜末端中央部付近の土塊は崩壊によって流失し、中央より右側に地すべり移動土塊が残留する変則的な地すべり形状となる。

2.地形・地質
 猪鹿倉地すべりは、四万十黒帯北帯と南帯の境界部付近に位置する。崩壊地周辺には若干の褶曲が認められるものの比較的整然とした砂岩粘板岩互層が認められる。
 地すべり末端部の崩壊地内では、標高850m付近より下流側に暗灰色の粘板岩が露岩するが、粘板岩の連続した層理は確認できない。粘板岩の走向はN45°E〜N9°Wで地すべり移動方向に対し概ね20〜45°の流れ盤の構造を示す。
 地すべり地末端部の露頭では、粘板岩は幅1〜数m程度のレンズ状を呈している。この粘板岩の下面と崩壊地内に露頭する粘板岩は、著しく風化粘土化しており軟質となっている。
 なお、地すべり地内には崩積土が厚く分布し、特に崩壊地末端部左側壁部には、層厚は20m前後の崩積土が確認される。
 標高800〜900m区間、斜面の平均傾斜は約30°で遷急点付近が滑落崖となり明瞭な馬蹄形を呈しており、冠頭部の上方斜面は緩傾斜の尾根地形を成している。滑落崖は落差1〜2m程度で左側壁〜冠頭部〜右側壁にかけて明瞭な滑落崖が形成され、落差は最大で3mに達する。右側壁部は冠頭部滑落崖から落差L5m程度の亀裂が連続し、標高850m付近まで連続するが、それより下流側では不明瞭となる。

3.素因・誘因
1)素因
 地すべり冠頭部には陥没地形が認められ、旧地すべり地形を呈する。
 概ね傾斜20〜45°の流れ盤構造。
 著しく破砕された軟質な粘土状を呈する粘板岩(砂岩および粘板岩互層)
2)誘因
 集中豪雨時に湧水等により牧良川の源頭部で崩壊が発生し、斜面上方に位置する旧地すべり地が末端の欠如によってバランスを崩し、地すべり中央〜右側壁の土塊が滑動した。

4.地すべり対策工事
 排土工、法面保護工

地すべりの特徴
 (1) 周辺地質図
 (2) 猪鹿倉地すべり概要
 (3) 地すべり平面図
 (4) 地すべり断面図
 (5) 地すべり対策フロー