国土交通省所管       小松原地すべり 長野県  

断層帯と地すべりの位置関係


周辺の地質図

「斜面防災技術」掲載号:Vol.52,No.2(2025年8月,通巻154号)

1.地すべりの概要

 令和3年7月6日朝6時ころ、長野市篠ノ井小松原地籍において地すべりが発生した。
 地すべり土塊が地すべり下部を通過する国道19号へ流出する恐れがあったため、1週間余りの間、国道の全面通行止規制が行われた。本国道は長野から松本方面や大町方面を結ぶ重要路線であったことから、生活、観光等に多大な影響を及ぼした。
 そのため、発災直後より、国道19号を管理する国土交通省関東地方整備局長野国道事務所(以下「長野国道事務所」という)と連携し、国土交通省国土技術政策総合研究所および国立研究開発法人土木研究所の助言を得ながら検討が進められた。

2.地形・地質概要
[地形][地質]
 現場は長野盆地西縁断層帯の西に位置し、地質は新第三紀の裾花凝灰岩層で構成されている。裾花凝灰岩は地すべりを起こしにくいと考えられていたが、実際は水を含むと強度低下し、風化に伴って地すべりが起きやすい地質となる。周辺の断層帯を北に辿っていくと、同じ裾花凝灰岩層のなかに、昭和60年7月に発生した地附山地すべりがあり、裾花凝灰岩層は、大規模崩壊の形態で比較的速度の早い地すべりを起こす地質であるということが分かる。

3.地すべり状況
 地すべり規模は、長さ240m、幅150m、最大地すべり層厚は約30mで、移動土塊量は約42万m3に及んだ。
 地すべり下部に位置していた工場、事務所、国道19号犬戻トンネル電気室が半壊し、地すべり土塊が国道へ流出する恐れがあった。
 長野県が実施する地すべり対策の検討は、土木研究所の応援を得て行い、さらに、土木研究所が作成した「地すべり災害対応のBIM/CIM モデル」を活用し、発災直後から地すべり現象の全体像を3次元的に把握し対策工を検討することで、約2週間後には、国土交通省から災害関連緊急地すべり対策事業(事業費:約10.1億円)の採択に至ることができた。

4.地すべり機構
[素因]
・新第三紀の裾花凝灰岩の分布域であり、水を含むと強度低下し、風化に伴って地すべりが起きやすい地質
・断層付近の脆弱な地質構造
[誘因]
・6月からの梅雨期には、1日当り15〜30mmの降雨が断続的にあった
・地すべりブロック上部は沢形状となっており、降雨のたびに地表水が供給される
・これらの水が間隙水圧を上昇させる

5.対策工
地すべり本体の対策(長野県対応)
 応急対策工:仮排水路工 横ボーリング工
 恒久対策工:集水井工:3基 頭部排土工:23,000m3 杭工:53本
地すべり末端の不安定土塊の対策(長野国道事務所対応)
 末端部法面工
地すべりの特徴
  地すべり全景
  小松原地すべり立体可視図
  小松原地すべりのBIM/CIMモデル
  地すべり対策施設の配置、施設干渉・連結等の確認
  施工状況