構造改善局 所管     野池地すべり 長野県
         
                                                            
           位置図                              平面図      

               
                        「地すべり技術」掲載号:Vol.18,No.1(1995年, 通巻64号)

地すべりの概要

1.地すべりの概要
 野池地すべり地は長野県南部、天竜川水系の足苅沢右岸の地すべり地である。昭和453月に地すべり防止区域(23.74ha)に指定された。当地区には民家、市道、耕地が密に存在している。
 地すべり発生の記録は、昭和45年〜48年の大規模な亀裂発生が最も古い。この亀裂は北東-南西方向に延びる尾根頂部に発生し、延長400mにわたり滑落崖の段差亀裂が発生した。末端は足苅沢に達した。幸い地すべり変位は小さく、移動速度も小さかったため、被害は比較的小さかった。

2.地形・地質概要
 (1)地形
 ・地すべり地内を流れる足苅沢は、卯月山断層(活断層)に沿って発達した水系である。
 ・足苅沢の東側は断層崖の急崖が連続する。
 ・足苅沢の西側は緩斜面が広がり、断層崖からの崖錐堆積物も分布する。
 ・地すべり地は足苅沢西側(右岸)の緩斜面に広がっている。

(2)地質
  ・基盤は生田花崗岩(領家帯)で、これを第三系の富倉層群や第四系の伊那層群が覆う。
  ・地すべりは、第三系,第四系の分布域に発生している。

3.地すべり状況
  ・地すべりの移動土塊は、第四系、第三系の堆積岩類と、花崗岩上部の風化花崗岩である。
  ・基盤の花崗岩は不透水層を形成し、地下水の基底床となっている。
  ・風化花崗岩には被圧した裂か水が賦存している。
  ・第四系、第三系の地層には自由地下水が賦存する。

4.地すべり機構

[素 因]
  ・断層の影響
      基盤のブロック化とこれに伴う岩盤の風化。
      地すべり地内への崖錐堆積。
  ・地下水の影響
      風化岩盤内への地下水浸透。
      岩盤の風化促進。
 [誘 因]
 ・降雨の影響
      降雨による地下水間隙水圧の上昇。
 ・足苅沢の浸食の影響
      渓岸崩壊発生による地すべり斜面下方の受動土塊の減少。

5.対策工
  地すべり発生誘因である地下水を排除するため、地下水排除工を主体とした対策が実施されている。集水井工15(うち中継井2)が施工され、一部水抜ボーリング工が採用されている。芦苅沢では渓岸の崩壊防止のため堰堤工、土留工が施工され、斜面脚部の固定が図られた。
 また、局所的な地すべりに対して、抑止工(杭工、アンカー工)も採用されている

地すべりの特徴
地すべり断面模式図