国土交通省所管       落合地すべり 長野県  

位置図


地質平面図

「地すべり技術」掲載号:Vol.22,No.1(1995年7月,通巻64号)
地すべりの概要

1.地すべりの概要

 現在活動している地すべりは範囲は約90haにおよび、地すべり地全体の面積は200haにも達する、大規模な地すべり地である。現在活動している地すべりのすべり面深度は約110mで、その移動土塊の堆積は2.0×107m3以上に達する。また、標高1,100m〜1,700mの高い高度の山地に位置していることも本地すべりの特徴である。

2.地形・地質概要
 千曲川水系夜間瀬川の支流である横湯川の源頭部に位置し、志賀高原北西部に隣接する。火山性の滑らかな起伏を持った斜面が広がっているが、地すべり地付近は渓流沿いに切り立った断崖や急斜面が連続し、荒々しい景観を呈している。
 地すべり地周辺の滑らかな斜面は第四紀更新世の安山岩溶岩で構成されるが、地すべり地内は新第三紀中新世の緑色凝灰岩が基盤岩類となっている。また、ひん岩の貫入岩体も存在する。第三系には熱水変質、温泉変質による著しい粘土化が見られる。 地すべり地末端には、かつての地すべり活動により形成された堰止め湖の湖沼性堆積物も分布する。

3.地すべり機構
(1)現在の地すべり活動 200haにおよぶ広大な地すべり地の中で、北側、南側の両側部に活発に活動する地すべりが存在する。主要な地すべりは南側のA,B,Cブロックで、中でもBブロック(延長約2.1km、幅約250m)の活動が顕著である。
(2)地すべり活動状況(伸縮計および多層移動量計の移動観測図) 年間を通じて緩慢な移動を続けいているが、ほぼ積雪の増加とともに移動速度を増し、融雪とともに減速するという、特異な移動特性を有する。
(3)すべり面 すべり面深度:Bブロック上部は10〜15mと浅く、下部で約52〜109mとなっている。 すべり面:厚さ数cmのきわめて塑性の高い粘土層中に形成されている。
(4)素因 基盤岩の初生的な熱水変質とその後の温泉変質による脆弱化。
(5)誘因 火山体からの豊富な地下水供給による間隙水圧の上昇が原因と思われる。融雪期に移動速度が減少するメカニズムは現在検討中である(孔内水位および積雪深・降水量変動図)。

4.対策工
 きわめて規模の大きな地すべりで、抑止工の施工は困難である。そのため、地下水排除工、地表水の浸透防止工を基本としている。
 昭和54年度から地表水排除工、平成2年〜4年にかけて集水井が施工されている。また、地すべり末端部では崩壊土砂の流出を防ぐための砂防ダムが建設されている。
地すべりの特徴
  地質断面図
  伸縮計および多層移動量計の移動観測図
  孔内水位および積雪深・降水量変動図