| 国土交通省所管 落合地すべり(その2) | 長野県 |
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1.地すべりの概要 落合地すべりは、下高井郡山ノ内町落合地籍の上信越高原国立公園内に位置し、周囲を標高2,000m級の火山群に取り囲まれており、規模は、長さ約2.5km、幅1.3km、深さ10〜64m、防止区域面積も約292haと、県内最大の地すべりである。 地すべりの下流2.0〜2.5kmには、観光名所の地獄谷野猿公苑や湯田中渋温泉郷などが広がっており、地すべりによる河道閉塞により下流に土砂が流出した場合、広範囲に甚大な被害となる恐れがある。 2.地形・地質概要 [地形] 末端部を流れる横湯川の河床標高は約1,100 m であるのに対して、地すべり頭部の標高は約1,650mであり、地すべりの比高差は550mとなっている。末端部では、横湯川と乙見沢が合流しているが、周囲の河川は、火山活動により噴出した溶岩流や火砕流の影響を受け、流下方向が屈曲している。 落合地すべりは、かつて巨大な地すべりが発生したと考えられ、現在の急斜面を滑落崖とする地すべり地内は周囲の地形と比べて緩斜面となっている。また,東西方向にやや細長い馬蹄形を呈している。 [地質] 周辺には志賀緑色火山岩類及び閃緑斑岩、横湯川湖成層、崩積堆積物が分布し、地すべり地内の地質は、緑色火山岩類、玄武岩質安山岩、ヒン岩類を基盤岩とし、その上位を湖成層と地すべりによって形成された崩積土が覆っている。 基盤岩類は初生的な熱水変質に加えて温泉変質を受けたものと考えられ、部分的に著しく粘土化しており、末端部付近は主に砂礫層からなる厚い湖成堆積物が分布している。また、基盤岩や湖成堆積物を覆って分布する岩塊や礫・砂・粘土からなる土石流堆積物は、最も厚いところで約110 m に達している。このように、大規模かつ複雑な地質構造を呈しており、対策の検討においてネックとなっている。 3.地すべり状況 昭和50年代から地質調査や弾性波探査などを実施していたが、平成2年に活動が活発化したことから、災害関連緊急地すべり対策事業により集水井工を施工した。平成3年に防止区域に指定、平成6年度からは「落合地すべり検討委員会」を設け、A〜Dブロックにおける機構解析や全体計画策定など、大規模かつ複雑な地すべりの活動を鎮静化するために、専門家の意見を反映しながら検討を進めてきた。 A〜Dブロックからなる沢状地形を呈する箇所は、B及びCブロックがもっとも活動的であり、地表移動量が平成14 年頃までは年間で最大約2mあり、特に融雪や降雨期には移動量が増大する傾向にあった。 平成25年までにA〜Dブロックにおける対策が進められたものの、平成27年頃から再び活動が活発となり、平成29年の融雪期においては、A、C及びEブロックに設置されている複数の地中伸縮計に変位を確認されたため、新たな構成員による「落合地すべり検討委員会」を発足させ、平成30 年から調査を再開した。 令和2年4月の融雪期には、大雪の影響もあり未対策のEブロック末端部で崩落が発生し、横湯川を一部閉塞したため、災害関連緊急地すべり対策事業(事業費:約1.1 億円)の採択に至った。 4.地すべり機構 [素因] ・基盤岩の初生的な熱水変質とその後の温泉変質による脆弱化。 [誘因] ・火山体からの豊富な地下水供給による間隙水圧の上昇が原因と思われる。 5.対策工 A〜Dブロック 排水トンネル:385m 集水井工:43基(いずれも施工済み) 集水施工の修繕工事(実施中) Eブロック 集水井5基(4基が施工済み) 押え盛土工(計画) |
| 地すべりの特徴 調査平面図・地質断面図 Eブロック末端部で発生した地すべり |