林野庁所管       橋立・清水倉(はしだて・しみずくら)地すべり 新潟県


地すべり平面図

位置図

「地すべり技術」掲載号:Vol.19,No.3(1993年3月,通巻57号)
地すべりの概要
1. 地すべりの概要
主にA−A′、B−B′、C−C′、D−D′の4地区があり、各地区に関しては以下の通り。
A−A′地区:
 昭和55年の融雪期に幅50m、延長200mの崩壊型地すべりが発生し、中腹を横断する県道を斜面下方に押し出した。調査の結果、地すべり面が崩土層最下面〜一部風化蛇紋岩中に形成されていて3つの地すべり面に沿って滑落したことと、すべり発生後も地すべり面に沿って微変動が続いていることとがわかった。
B−B′地区:
 昭和61年、ブロック内の随所で著しい沈下変状が発生、台地状の緩斜面全体が約30mの厚さの崩土層より構成されていること、そして崩土層の約半分に相当する土塊が円弧状の地すべり面に沿って緩やかに滑動していること、および崩土層全体が飽和状態に近いことが確認された。
C−C′地区:
 昭和63年秋、ブロック末端部が幅70mにわたって滑落するとともに、縁辺部に断続的な横ずれ変位が発生し、その後、C−C′地区平面図での実線部が崩土層最下面を通る地すべり面に沿って滑動、特にC−C′測線沿いの地域で激しく動いていることと、この地域に地下水が集中しやすい構造になっていることが判明した。
D−D′地区:
 昭和30年代に最初の対策工事(集水井4基)が施工された。近年になって新たに顕著な変状が発生するようになり、台地状の斜面全体が40〜70mの層厚の地すべり崩土(礫質土主体で不規則に粘性土が混在)より構成されること、崩土層中に流動性のある地下水脈が複雑に伏在していること、崩土層最下面に沿って累積性変動が現在も続いていることが確認されている。

2.地形・地質概要
 糸魚川−静岡構造線の西側地域は、一般に比高差600〜1,200mに達する急峻な山岳地形を呈し、山腹勾配も平均30〜40°の急角度であるが、当区域の周辺に限り勾配13〜20°の緩斜面が分布している。 基盤は結晶片岩および蛇紋岩から成り、礫質を主体としてこれに粘性土が不規則に混合して地すべり崩土となっている。

3.素因・誘因
誘因: @融雪による間隙水圧の急上昇
素因:
A−A′地区:
@構造運動に伴う基盤岩の劣化
B−B′地区:
 @構造運動に伴う基盤岩の劣化 A台地状の緩斜面全体が崩土層より構成
C−C′地区:
 @構造運動に伴う基盤岩の劣化 A地下水の集中しやすい構造
D−D′地区:
@構造運動に伴う基盤岩の劣化
A台地状の斜面全体が崩土層より構成
B崩土層中に流動性のある地下水脈が複雑に伏在

4. 対策工
A−A′地区:杭打工
B−B′地区:地下水排除工(集水井工3基)
C−C′地区:地下水排除工(集水井工2基;追加を検討中)
D−D′地区:地下水排除工(集水井工4基)
地すべりの特徴
C−C′およびD−D′地区地すべりの全景
A−A′地すべり断面図
B−B′地すべり断面図
C−C′地すべり平面図
C−C′地すべり断面図
D−D′地区断面図
新潟県の降水量分布図