林野庁 所管         鎌倉(かまくら)地すべり 新潟県
 
           
           平面図                          位置図
「地すべり技術」掲載号:Vol.29,No.1(2002年7,通巻85号)
地すべりの概要

1. 地すべりの概要
 当地区は魚沼丘陵のほぼ中心部にあたり、小千谷市から南南東方向へ約30kmに位置している。調査地は,桝形山から西南西〜南方向に延びる枝稜線の西側斜面にあり,鎌倉沢川とその支渓沿いの斜度20〜30°の急斜面に存在する。平成4年10月に大きく移動している。すべり方向はほぼ北西方向となっており,すべりの末端は鎌倉沢川の支流付近にまで及ぶ。発生当時の資料をみると,尾根頂部に非常に大きく連続した滑落崖があるが,大きな地形の乱れはみられず,そのままの状態で移動したようである。ブロックの規模は幅60m位,長さ150m,すべり面の深さは最大約25mである。
 調査時点ではブロック上部には頭部付近で小規模な崩壊が生じていた。また,中央部付近で同様に連続した亀裂がみられた。また,斜面中部〜下部の南側では斜面の崩壊が著しい。これは,ガリに沿って降雨時などに斜面が侵食されて崩壊が発生しているものである。ブロック下部で亀裂,段差,崩壊が著しく,特に横方向に走る亀裂が無数に発生していた。ブロック末端では,鎌倉沢川の支流に接する斜面の浸食が進み,幅3〜5mほどの崩壊が多く見られる。この崩壊した斜面内には所々で湧水が見られた。
 すべりの発生原因としては主に次のようなことが推測された。 地表踏査の結果から,ブロック内には浅層地下水,地表水の流入・浸透が観察されるところが多い。 調査ボーリングの揚水試験結果より,調査孔下部には多量の地下水があり,これがすべり面に作用している。 観測結果より,降水量および地下水位変動と歪変動の時期には相関性がある。
 本調査地は,周辺より水が集まりやすい地形である。

2.地形・地質概要
 本調査地周辺の地質は下位より一村尾層の火山岩〜砕屑岩相,岩之沢層,和南津層,魚沼層からなる。調査地は主として礫層とシルト砂互層の繰り返しから構成される魚沼層が分布している。地質構造は北方向に地層が傾く単斜構造である。

3.素因・誘因
(1)素因:
ア.地形傾斜が20〜30°の急斜面であり,末端の渓流も浸食されている。
イ.急斜面であるため地表水によりガリが発生し,これにより小崩壊が拡大して,ブロック全体の不安定化につながる。
ウ.礫層,砂層が主体であるため,地表水が流下し地下に浸透しやすい。調査地では,地質が魚沼層の礫層,砂層である。ボーリング調査でも砂礫,砂層を中心に分布する。
エ.地層が比較的新しいため,固結度が低く崩壊しやすい。
(2) 誘因:
 豪雨や融雪時には多量の地下水が供給されるため,含水による土塊の脆弱化や,すべり面に作用する間隙水圧の上昇などがあげられる,および調査地は水位も高く、降雨による地下水の変動が激しい。
4.対策工
水抜きボーリング 60m×5孔×2群,65m×4孔×3群,35m×7孔×2群 暗渠工,水路工,土留工,護岸工, 
地すべりの特徴
 
調査地周辺の地質図
 地質断面図