林野庁 所管          中束(なかまるけ)地すべり 新潟県

対策工平面図

位置図

「地すべり技術」掲載号:Vol.19,No.2(1992年11月,通巻56号)
地すべりの概要

1. 地すべりの概要
新潟県北端に近い岩船郡関川村の中束地区では昭和56年4月13日午前7時半ごろに 大規模な地すべりが藤沢川(荒川水系)左岸で発生し、翌57年に、地すべりを含む13.92haが地すべり防止区域として指定された。 発生当時は20〜50cmの積雪があり、4日前からの気温の急上昇および2日前の若干の 降雨により融雪が急速に進み、多量の融雪水が地すべり斜面に供給されて引き金になり、地すべりが生じた。冠頭部には大規模な滑落崖が形成され、滑落崖の東半部は落差約20m、傾斜20°の平滑斜面、対して西半部は深さ20〜30m、幅10〜30m、延長200mにも達する大規模な陥没帯となった。また、斜面内部には沢状地・凹地に集中するように多数の亀裂が発生した。 地すべり発生以後、平成2年まで地すべり防止工事が行なわれ、現在は概成となって いる。

2.地形・地質概要
当地区は藤沢川左岸に位置し、周辺は標高200〜300m程の丘陵地で、斜面の傾斜は緩やかで、また河谷は浅く広くなっていて、河岸段丘の発達が著しい。 地質は、古生界とこれに貫入している花崗岩類、およびこれらを不整合に覆う新第三系より構成され、この内、黒色頁岩〜暗灰色頁岩から成る新第三系下部の下関層が地すべりの基盤となっている。また、下関層中に挟在する暗緑灰色の凝灰質砂岩・乳白色の軽石質凝灰岩・白色細粒の凝灰岩薄層が地すべりの滑剤にもなっている。 地すべりは流れ盤になっており、冠頭滑落崖の一部は層理面がそのまま地すべり面となっている。

3.素因・誘因
(1)素因:
 @葉理に沿って削剥しやすい頁岩の地盤
 A凝灰質の薄層の存在
 B流れ盤構造の層理面
(2)誘因:
 融雪水による地下水量の増大および水圧上昇

4.対策工
鋼管杭工,排土工,集水井工5基,横ボーリング工
地すべりの特徴
 斜面上部の地溝帯状開口亀裂(昭和56年4月撮影)
 発生直後の亀裂分布図
 地すべり断面図
 新潟県の地質図
 新潟県の降水量分布図