構造改善局 所管             伊後(いご)地すべり 島根県


対策工平面図

位置図
「地すべり技術」掲載号:Vol.23,No.2 (1996年11月,通巻68号)
地すべりの概要
1. 地すべりの概要
 伊後地すべり防止地区は隠岐島後の北端に位置していて、昭和16年の豪雨を契機に 地すべりによる被害が顕著になり、以降昭和20年・34年・39年の各豪雨により被害が拡大し、昭和42年12月20日に地すべり防止区域として指定された。この後、対策工が施されて昭和59年の第二期工事終焉後は地すべりがおおむね停止状態となっていたが、昭和63年の豪雨を引き金として対策施工されていないブロックの滑動が活発化し、更に平成3年の豪雨で道路・家屋の被害が拡大したため、平成4年に伊後第三期地区として地すべり調査および対策工事が行なわれている。   伊後地区の地すべりは、基盤岩である泥岩の最上部をすべり面とする初生すべりと、泥岩風化層の最上部をすべり面とする再発すべりに区分できる。前者は泥岩風化層も含む地すべり移動であり、ボトルネック型の地すべり形態を示していて、古い時期から滑動を続けているが、日本海に面する急崖が豪雨時に崩壊して地すべり末端部の抵抗土塊が減少することによって全体のバランスが崩れることが原因であると推定される。後者は大峯山から供給される崩壊土が10m前後の厚みで泥岩風化層をすべり面として滑動するものである。
 現在の主たる滑動は再発地すべりであり、過去からの滑動の繰り返しによって鏡肌を有するすべり面も存在している。
2.地形・地質概要
 伊後地区は隠岐島後の北部の、北向きに馬蹄地形をなしている大峯山北側の裾野にあり、一帯では急崖斜面が馬蹄地形を遷緩点として緩傾斜の地すべり斜面となり、当地区はその斜面内の末端部となっている。
 本地区は新第三系中新統の伊後泥岩層を基盤として、その上位を隠岐流紋岩(伊後地区を取り囲むように分布)の礫および大峯山産の玄武岩の礫を多量に含有する崩壊土に覆われている。伊後泥岩層はスレ−キング性が強いため、地下水流動により風化が促進されて厚い強風化層の分布が内部に見られるが、この強風化層は非常に破砕された状態で鏡肌が多量に確認されることから、伊後地区のすべり面を形成していると考えられる。
また、南にそびえる大峯山が亀裂の多い第四紀玄武岩で形成されており、キャップロックとして伊後地区への多量の地下水の供給源となっている 。
3.素因・誘因
 (1) 素因:
  1)モンモリロナイト泥岩および良透水性の崩積土の分布
  2)背後にそびえる大峯山からの地下水の多量供給
 (2)誘因: 豪雨による地下水の多量供給。
4.対策工
 集水井工(6基),排水トンネル工,杭工
地すべりの特徴
伊後地区周辺地質図
伊後地すべり対策工断面図
島根県地質図