林野庁 所管          伊努谷(いぬだに)地すべり 島根県

位置図


地すべりブロック及び対策工平面図

「地すべり技術」掲載号:Vol.29,No.2(2002年11月,通巻86号)
地すべりの概要
1. 地すべりの地概要
 伊努谷地すべり地区は出雲市の北東約6km、西林木町地内から伊努谷川沿いに260m上流側の西側渓流上部斜面内に位置する。当斜面では小規模な斜面変動が断続的に発生していたが、平成10年5月7日〜12日の集中豪雨の影響により地すべり規模が拡大し、移動土塊が大規模な土石流となって下流側に流れ出し、この時に冠頭部から左岸側にかけて落差5〜10mの滑落崖が北東方向に20mにわたって形成された。地すべりの規模は、幅50m、斜面長130m、移動層厚約10mであり、尾根地形に規制された細長い形状となっており、この地すべりによって下流側の谷止工は土石流化した移動土塊に埋め尽くされ、地すべりの滑動規模が拡大した場合には、谷止工を乗り越えて人家に甚大な被害を起こすことが想定される事態となっていた。この事態を受け、地内に伸縮計を1箇所設置するとともに防災ヘリコプターにより地すべり活動を監視し、活動を検知した場合にはサイレンにより避難勧告をする体制ができた。
 末端の斜面に接する沢に上部斜面からの地すべりによる崩落土砂が押し出されて流出していることが、また、地すべり地内の中腹斜面では、これを裏付けるように、各所で表層の不安定土砂による崩壊や湧水の湧き出しによるボラが、確認されている。
  冠頭部: 標高165mを最大として幅20mの範囲で直高h=5〜10m程度の段差を伴う滑落崖があり、亀裂は斜面下方向き。滑落崖表面は硬質な流紋岩。
 中腹部: 標高120〜125mに伸縮計を設置。平成10年5月7日〜12日の連続降雨により、地表面に4〜10mm程の亀裂が発生。崩壊土砂および湧水の噴き出しによるボラ地形が確認される。標高145m付近では地すべりによる流紋岩体の押出し・破砕も見られる。
 側壁部: 下部では傾斜がより緩く、地層走向はやや左岸側の沢地形の発達方向へ変化。上部での地すべりの発生によって地すべり末端が押し出されて、地形の乱れと流紋岩転石が見られる。 ひずみの累積変動は、表層から深部までの区間で地すべり活動に伴い脆弱化していて、また、すべり面に関しては、風化泥岩と弱風化流紋岩との層界付近で亀裂が多く、褐鉄鉱の付着が顕著で、厚さ30cm程度の白色粘土層が挟在している。
2.地形・地質概要
 本地区の斜面は左岸側の滑落崖および右岸側の尾根地形に規制された凹型の集水地形をなしており、斜面中腹部では北西方向から伊努谷川支流が合流していて、豪雨時には両渓流の合流点から下流側への土砂の流出が著しく認められる。また、地すべりの小ブロック化崩壊が繰り返し発生しているため、植生の大部分が竹林、広葉樹(小径木)となっている。
 周辺には新第三系の砂岩・凝灰岩・流紋岩が分布しており、また、地すべり地近傍には同じく新第三系の泥岩・流紋岩が分布し、上位の強風化泥岩と下位の風化流紋岩の境界に地すべり面が形成されている。地すべり冠頭部より上位斜面に分布する流紋岩は自破砕溶岩であって角礫状を呈するが基質は硬質であり、冠頭部斜面には堅い流紋岩が分布している。
 付近に背斜軸が確認され、冠頭付近から左岸側に延びる中規模滑落崖の延長方向と背斜軸方向がほぼ一致している。
3.素因・誘因
 (1) 層界付近の粘土化および地下水流動
 (2)誘因:豪雨による間隙水圧の上昇。
4.対策工
 排土工,ボーリング暗渠工,アンカー工
地すべりの特徴
 地すべり平面図
 地質および対策工断面図
 島根県地質図