構造改善局所管           半平(はんだいら) 地すべり 徳島県


半平地すべり全景



半平地すべり平面図

                   「地すべり技術」掲載号:vol.26 No.2(1999年11月、通巻77号)
1.地すべり地の概要
 半平地すべりは、徳島県のほぼ中央部付近の徳島県美馬郡穴吹町大字古宮に位置する。古宮地区は、穴吹町南部の穴吹川上流部の集落で、西流する穴吹川の北岸に面した地区で、背後に半平山をひかえた広大な斜面上に集落が形成されている。
 昭和51年の台風17号による災害の際には、穴吹川沿いあるいはこの支渓沿いのいたるところで地すべり、崩壊が生じ、一部の地区では壊滅的は被害を被っている。渓流沿いの崩壊現象が特に目立っているが、その背後には大規模な風化岩地すべりが形成されている。このような大規模な風化岩地すべりが滑動に至る例はまれであると考えられる。この地すべりの規模や形態については不明な点が多いが、豪雨等に伴って滑動し、安定度は徐々に低下していくものと思われる。
 半平地区の地すべりは、西側のAブロックと東側のBブロックに大別され、さらにAブロックはA-1〜A-4ブロック、BブロックはB-1〜B-3ブロックに細分される。顕著な変状が見られ、地すべり対策工事の対象ブロックとなっているのはA-3ブロックである。
 A-3ブロックの地すべりによる変状は、町道は路面全体が大きく沈下し、谷側擁壁も前方へ傾いている。道路山側の擁壁にもクラックが見られる。また、道路上部の民家では、軒先に生じた落差20cm〜30cmのクラックによって家屋が大きく傾き、居住が困難な状態になっている。

2.地形・地質概要
 穴吹川は剣山に源を発し、南北、東西方向に幾度も折れ曲がりながら北流し、吉野川に合流している。半平地区付近では穴吹川の支流や支渓も東西・南北方向のものが卓越し、格子状水系模様が形成されている。当地区では南北方向の水系が卓越しているが、あまり分岐せず、また地すべりブロック内では水系密度も比較的粗い。
 地すべり地内の標高は、河床付近で150m〜160m、背後に屏風のように連なる断崖の脚部では550m〜700mに達し、標高差は400m以上である。この問の平均斜面勾配は25°前後となる。
 半平地区背後に比高数十mの断崖があり、この下部には勾配30°前後から徐々に勾配の緩くなる起伏の少ない崖錐地形が形成されている。この急崖部は地すべりの冠頭部ではなく、大規模な転倒性崩壊によって生じた急崖と考えられる。崩壊した岩塊が断崖下部に堆積し、崖錐地形を形成していると思われる。
 このような崖錐地形が、幅200m〜400mにわたって形成されている。この下部には古い段丘〜山麓平坦面痕跡地形と思われる10°前後の勾配の平坦面が広がっている。この平坦面もその一部は現在の地すべり運動によって消失しつつある。
 平坦面の下部には、標高差300m、勾配20°〜30°の地すべり性斜面が広範囲にわたって形成させ、そのまま河床沿いの急崖にまで達している。
 当地区は三波川変成帯の無点紋帯に位置している。地層構成は三波川変成帯の結晶片岩類を基盤岩とし、この上位を第四紀洪積世から沖積世にかけて形成された地すべり性崩積土層、あるいは崖錐堆積物が厚く覆っている。
 基盤岩は、泥質片岩が大半を占め、この中に砂質片岩、塩基性片岩が挟まれている。また、斜面上部では塩基性片岩の割合が増している。
 地質構造では、当地区は東西方向に延びる大歩危背斜軸の南翼に位置している。この背斜軸はEW〜N80°Wの走向でほぼ垂直に近い褶曲軸面を有し、この南翼である当地での片理面の走向傾斜は、EW〜N70°Wの走向で60°〜80°の急角度の南傾斜となっている。片理面は比較的フラットなものが多いが破砕帯に近接した部分では、微褶曲構造が著しく発達し、走向断層が時折見られる。
 断裂系としては、背斜軸面に沿った走向N80°W、垂直〜80°南傾斜の断層破砕帯が特によく発達し、幅20m以上の破砕帯が露頭で確認されたものだけでも2箇所、これ以外にも数箇所分布していることが推定されている。

3.地すべり機構
 当地区の地すべりは、非常に大規模な風化岩地すべりが潜在していると考えられる。その規模は幅200m〜300m、あるいはそれ以上、斜面長は数百mに達し、平成元年度に実施した調査ボーリング結果からは、すべり面深度は50m以上であることが確認されている。
 現在顕著な滑動を見せているA-3ブロックは、大規模な風化岩すべりの側方ブロックにあたる。地すべりの幅は120m程度、昭和63年度から実施している調査ボーリング、及び孔内傾斜計観測結果より、深さ26m〜27mのすべり面を有する風化岩すべりであることが判明した。
 この地すべりの動きは、豪雨時にだけ一時的に滑動するタイプのものでなく、クロープ性の変位が常時継続する動きを見せ、その速度は1ケ月に1cm前後に達している。降雨と地下水位の関係は降雨からやや遅れて地下水位が上昇する傾向が見られ、深層の地下水が関与している可能性が考えられる。降雨と地すべりの動きも同様で、ある程度降雨から遅れて現れる傾向がある。しかし、豪雨の直後には明瞭な動きが生じている。

4.地すべりの素因と誘因
1)素因
 @ 地形
 ・ 穴吹川の浸食下刻作用による、勾配約20°〜30°、標高差400m〜550mに達する斜面が形成されている。連続的な断崖が形成される特異な地形。
 ・ 厚い風化帯や崩積土層が残積し、地下水の涵養源や流下経路を形成している。
 ・ 斜面中段の平坦面
 A 地質
 ・ 岩盤の転倒褶曲構造に起因する、大規模な風化岩すべり。
2)誘因
 ・ 地すべりブロック末端、さらに側方部の浸食作用
 ・ 豪雨による大量の地下水が供給、地すべり移動層中の間隙水圧も急激な上昇。
 ・ 末端部の崩壊に伴う、斜面の安定度は大きく低下し、現在では若干の降雨でも断続的にクリープ性の地すべりを生じる。

5.地すべり対策工
・横ボーリングエ(地上)……5箇所
・集水井工……4基
・アンカー工

地すべりの特徴
  (1) 半平地すべりA-3ブロック断面図