国土交通省所管    本宮(ほんぐう)地すべり    和歌山県 

本宮地すべり全景

本宮地すべり全景

空中写真判読によるリニアメント図

空中写真判読によるリニアメント図

「斜面防災技術」掲載号:Vol.41,No.2(2014年8月,通巻121号)

地すべりの概要

1.地すべりの概要

 田辺市本宮行政局から南方向約1 kmに位置し、直下に国道168号と一級河川熊野川を擁する。地すべりは斜面長約340m、幅約150m、推定移動土塊量約126万m3の規模で、平成15年6月の豪雨時に末端斜面での崩壊と上部斜面での陥没帯を伴う大規模な地すべりが発生した。

2.地形・地質概要

 地すべりは大きな馬蹄形集水斜面の中にあり、末端を流れる熊野川の攻撃斜面にあたる。空中写真判読から地すべりブロックを囲う複数のリニアメントが確認される。

 地質は、新生代古第三紀〜新第三紀の四万十帯牟婁(むろ)層群に属し、砂岩・泥岩および礫岩が規則的に交互配列するフリッシュ型互層である。泥岩層は硬質であるが一部破砕を受け脆弱化している。地層の走向・傾斜はN10〜30°W・30〜40°Eの流れ盤構造を呈する。

3.誘因と素因

 素因として、

  • 北東から南東方向に連続する尾根筋に囲まれた明瞭な馬蹄形集水斜面。
  • 脆弱な地質条件と、層理の傾斜方向と斜面方向がほぼ一致した流れ盤構造。
  • 地すべり周縁を規制する節理系の存在。
  • 上方域から下方域へ流下する、各ブロックに対応する地下水帯の存在。

 誘因として、

  • 熊野川の水衝部で、河川侵食と脚部流亡による斜面の不安定化。
  • 集水地形を呈し亀裂の多い地質条件のため、地表水の集中と浸透。
  • 破砕された泥岩部の、地下水による風化・粘土化の進行。
  • 集中豪雨に伴う間隙水圧の上昇。

4.対策工

・抑制工:排土工:対策構造物の導入前に地すべり活動を小康化するため約43万m3を排土。

 :地下水排除工:集水井6基217mと集水ボーリング120本5,685mを施工。

・抑止工:浅層・中層ブロックの安全率確保のためアンカー工3段223本6,548mを施工。

5.景観対策と住民参加の植樹の取り組み

  • 排土で変化する景観を従前の環境に劣らず復旧させるため、景観保全計画を策定。
  • 地域本来の常緑広葉樹林まで回復するには長期間かかるため、自治体・NPO・住民等の多様な参加主体で「君が育てる熊野の森協議会」が設立され、活動が開始。
  • 地元小中学校の卒業生による卒業記念植樹が行われ、平成18〜25年の間に2,740m2の植栽が完了。

地すべりの特徴

図1.本宮地すべり対策工平面図

図1.本宮地すべり対策工平面図

図2.本宮地すべり対策工断面図

図2.本宮地すべり対策工断面図

景観対策と住民参加の植樹の取り組み

図3.地元小中学校の卒業生による卒業記念植樹の様子、平成19年2月

(大日山地すべり対策事業と世界遺産の景観保全、平成26年度砂防学会研究発表会概要集より)

図3.地元小中学校の卒業生による卒業記念植樹の様子

図3.地元小中学校の卒業生による卒業記念植樹の様子

図4.平成28年6月時点の緑化状況

図4.平成28年6月時点の緑化状況