国土交通省所管    西沢地すべり 山梨県 

 西沢地すべり全景                           位置図

              「斜面防災技術」掲載号:Vol.19,No.1(1992年,通巻55)

地すべりの概要

1.位置
西沢地すべりは、甲府盆地の南端に位置する鰍沢町(現富士川町)にある。
鰍沢町では甲府盆地を流れる釜無川と笛吹川が合流し、富士川となって流下している。

地すべり地形をなしている十谷台地は、大柳川(富士川支流)に面した標高550m前後の台地である。台地には民家が密集している(96)。大柳川は南アルプスの前衛山地にあたる巨摩山地の南部に入り込んだ渓谷を形成している。
巨摩山地は南北に連なる山体を形成しており、鰍沢より南では、東の富士川と西の早川で画されている。十谷地区は富士川に面する東側山体に位置する。

2.地質概要
十谷地区が位置する東側山体には中新世中期から前記にかけての巨摩層群(櫛形山亜層群)が分布する。巨摩層群は主に海底火山噴出物である玄武岩・安山岩などの溶岩、火山砕屑岩、凝灰角礫岩からなる。一部に泥岩、砂岩などの堆積岩ないしこれらが変質した地質が分布している。
十谷地区では火山噴出物が顕著に分布する。地すべり末端の大柳川沿いでは玄武岩および同質凝灰角礫岩、地すべり中腹、上部の十谷集落内では安山岩質の火山砕屑岩および凝灰角礫岩が分布する。これらの岩石は破砕を被った亀裂の多い岩塊で、粘土化の進んだ箇所が多い。

3.地すべり状況
(1)地すべりブロック
地すべり状況と斜面状況から4つのブロックに区別されている。
1)東沢ブロック
昭和39年の台風で地すべり活動が顕在化。対策工の整備により昭和50年以降の変動はない。
2)西沢川ブロック
昭和10年ころから地すべり変状が顕著になり始め、昭和23年と39年に拡大した。集水井工などの効果で地すべり活動はおさまってきた。
3)末端ブロック
明治時代より変状の一部が現れており、昭和52年の台風で明瞭になった。当地区内で最も顕著な地すべり現象が生じていた。
4)全体ブロック
上記3ブロックを包括する大規模地すべり。昭和61年ころから、深度6070mの深層部で孔内傾斜計の変動が観測された。過去に発生した地すべりの再活動。

(2)地すべり対策事業の経緯
1(昭和41年度〜昭和52年度):西沢川ブロック・東沢ブロック
2(昭和53年度〜昭和63年度):末端ブロック・西沢川ブロック
3(平成元年度以降):全体ブロック

4.地すべり機構
[素因]
・基盤岩を多う厚い未固結堆積物の分布
 1)崩落岩塊   台地状斜面に層厚6080mで分布する。
 2)旧河床堆積物 東沢ブロックで層厚40m前後で分布する。
  3)崖錐堆積物  上部斜面に層厚2030mで分布する。
・すべり面下の強風化層内に被圧地下水が存在する。
・すべり面付近に地下水流動層が集中している。

[誘因]
・埋没した旧河床付近の地下水の影響(全体ブロック)
・河川浸食の影響(西沢川ブロック・末端ブロック)
・末端斜面の崩壊(全体ブロック)
・上部斜面での崖錐堆積の供給(全体ブロック)
・渓流からの伏流水(全体ブロック)

5.対策工
西沢川ブロック、末端ブロックでは目標安全率Fs=1.20として対策工が計画されている。全体ブロックは地すべり規模が大きく、安全率をFs=1.20まで上昇させることは困難なことから目標安全率Fs=1.10として対策工が計画されている。
地下水排除工(立体排水工・集水井工)の効果は良好であり、全体ブロックについて目標安全率を上回る安全率が確保されている。

地すべりの特徴
東沢ブロック層区分対比表
対策工事計画平面図
模式縦断面図
模式横断面図
地すべり対策の概要表