新技術紹介

現場透水試験・簡易揚水試験

制作:中央開発(株)

現場透水試験・簡易揚水試験ともに、1つのボーリング孔を利用した単孔式の試験法で、地盤の透水係数を求めるものである。

両試験の比較を行うと表1のようである。

表1 比較表

1.現場透水試験

(1)試験の概要

ボーリング孔を利用した現場透水試験は、岩盤を対象としたルジオンテストのようなパッカ―による定常法と地下水位を強制的に低下・上昇させ、その水位変化を経時的に測定する非定常法の2種類ある。

地すべり調査では非定常法が広く利用されているが、通常は地下水位以下の地盤を対象とする。方法としては図1に示すように、ピエゾメータ法(ケーシング法)、チューブ法(孔底法)、オーガー法等がある。このうち回復法によるピエゾメータ法が標準となっている。以下、ピエゾメータ法について説明する。

図1 各種単孔式現場透水試験

(2)試験準備

試験区間上位からの地下水が流入しないようにケーシングパイプを挿入し、試験区間を目詰まりのないように作成する。試験区間の崩壊が懸念される場合はストレーナを挿入する。スライム排除、孔内洗浄を行う。

試験に必要な用具としては、ベーラ、地下水位測定器具などである。

(3)試験

ベーラなどにより地下水位を低下させ、低下後の経過時間~水位回復状況を測定する。測定は平衡水位あるいは翌朝水位まで行う。

(4)透水係数の算定

図2にピエゾメータ法の試験条件の事例および概念図を示す。

図3に示すように、平衡水位からの水位差と経過時間を片対数(水位差を対数目盛り)グラフにプロットし、初期立ち上がりの直線部分の傾きを求めて、次式から透水係数を求める。

図2 現場透水試験条件概念図 図3 現場透水試験の例

(5)留意点

手軽にできることから数多く実施されているが、以下の点に留意する必要がある。

  • 測定できる透水係数がk=1×10-2cm/s程度が上限である。砂礫層などの透水性が高い地盤では信頼性が低くなる。
  • 透水係数の算定式は多くの仮定のもとで成立している。また、算定式によっては値が異なる。
  • 試験の区間長を長く確保することが難しく、層全体の代表的透水係数を求めにくい。
  • 試験結果に及ぼす平衡水位決定の影響、目詰まりの影響などが大きい。

2.簡易揚水試験

(1)試験の概要

地すべり地の地盤の透水性を把握するために広く行われている方法である。通常の揚水試験と異なり、一つのボーリング孔を利用するもので、地下水位が一定となるように地下水を汲み上げ、その揚水量を求める。さらに、揚水を中止し、時間~水位回復曲線を求め、ヤコブ式を適用して透水係数を算出するものである。

(2)試験準備

試験区間上位からの地下水が流入しないようにケーシングパイプを挿入し、試験区間を目詰まりのないように作成する。スライム排除、孔内洗浄を行う。 試験に必要な用具としては、揚水ポンプあるいはベーラ、揚水量の測定装置、地下水位測定器具などである。

(3)試験

現場透水試験と同様に揚水ポンプあるいはベーラなどにより地下水位を低下させるが、図4に示すように、一定地下水位に保つのに必要な汲み上げ量を求め、揚水停止後の経過時間~水位回復状況を測定する。地下水の汲み上げは試験区間が10m程度より浅い場合は揚水ポンプ、これ以上に深い場合はベーラを用いることが多い。また、測定時間は特に規定はないが、30分程度以上は行う。

図4. 簡易揚水試験概要

(4)透水係数の算定

透水係数の算定

(5)留意点

地すべり調査などで数多く実施されているが、以下の点に留意する必要がある。

  • 一定の試験区間長(約2~3m)を確保することが必要となる。
  • 一定水位を保つための一定の汲み上げ量が必要となる。
  • 地下水位がない場合あるいは水位が回復しない場合は、注水法により平均注入量から透水係数を求める。

図5 ヤコブの回復法による解析例

<引用文献>

  • (財)国土開発技術研究センター(1993):
    地下水調査および観測指針(案)、山海堂、p.183.
  • 関東地質調査業協会(1995):
    ボーリング孔を利用する原位置試験についての技術マニュアル、p.161.
  • 建設産業調査会(1998):
    改訂地下水ハンドブック、地下水ハンドブック編集委員会編、p.308 .

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