(株)アイビック
平成21年7月に発生した、富士山駐車場における落石死亡事故では、直径1.2mの石が既設の防護柵を破ってキャンピングカーに衝突した。過去に対策を行った箇所でも、年月の経過と共に新たな落石要因が生じることを念頭におかなければならない。
人命はもちろん、家屋および道路、鉄道などの重要なインフラを護るためにも落石対策工の重要性は増している。
落石対策工には、直接発生源対策を行う「落石予防工」と待受型の「落石防護工」に分類される。それらの形状はH鋼、丸鋼、ワイヤーロープまたは金網など様々なタイプがあり、また、その設置場所も保護対象物の付近から発生場所である斜面上までと様々である。
代表的な工種として、「落石予防工」には、
「落石防護工」には、
等がある。
最近の新しい技術としては「高エネルギー吸収型」と呼ばれる緩衝装置を用いる工法や海外から高強度のネットを導入し、より大きなエネルギーに対応できる工法も多い。
落石防護柵工は一般的に、重力式擁壁やコンクリートブロックを基礎として支柱を立て込む方式が用いられるが、写真1~3は線路脇、吊り橋(遊歩道)脇、斜面上など大型機械の進入や生コンの打設等、資機材の搬入の困難な場所での高エネルギー吸収型落石対策工の状況である。
このような場所では、重力式擁壁等を基礎とせず、写真4.のように小型の削孔機での鉄筋挿入工を基礎としての施工となる。
鉄筋挿入工等を基礎とする落石対策工の場合の多くは、単管パイプ足場を設置し、その上で軽量削孔機(300kg程度)にての施工となる(写真4)。動力となる電気やエアーは離れた場所から引き込めるので、大規模な施工ヤードは必要としない。
所定の深度まで削孔後、孔内にセメントミルクを注入し鉄筋を挿入する。その後支柱を立て込み(写真5)鉄筋と一体化させ固定する。または、ナットを締付け高強度ネットと一体化させる(写真6)。
鉄筋挿入工を基礎とする場合、その必要抑止力の効果を発揮するために定着層(不動地山)の判定が非常に重要である。設計図書通りの土質なのか、深度に合わせ実際のスライムを採取し色、形状、硬さなどボーリングデータとの比較検討能力が問われる。土質に関する知識と、その地域における独特の地質構造の把握などの経験も不可欠となる。
また、グラウトの効果を得るためには二重管削孔(写真7)が必要な場合もあり、孔壁が崩壊する恐れのある土質では削孔機の選定にも留意が必要である。